【けんご大賞特別賞】白い薔薇の淵まで

文芸

ウツボカズラのなかで死ぬ昆虫みたいな話

Twitterでふぉろあーさんとやり取りで出てきた言葉です。
この話はそれに尽きると思います。

主人公は「わたし」
独身の女性。
そして「山野辺 塁」
やまのべ るい
女性です。
二人は出会ってからすぐ濃厚な関係に溺れていきます。
たぶん著者の話をはじめて読む方は
濃密なベッドシーン、しかも女性同士のもの、に
びっくりされると思います。

ベッドシーンとか女性同士とか
そんなの関係なくて、
ありきたりになりますが
魂同士のふれあい、なのだと思いました。
お互い狂おしく求めあい、
次第にこの生活は破綻していきます。
そうでしょう
顔を合わせればセックスしかしない。
一緒にどこかに出かけたいと願うわたしに
塁は言葉巧みにセックスに誘導します。
それは次第にセックスではなく、
食中植物に捕らわれた蝶のようにも見えます。

常識を逸脱してる塁の素譲が明らかになるにつれて
わたしは何度か
この生活から抜け出そうともがきます。
そのもがきがリアルです。
親の為に結婚して、子どもをみせるためにセックスして。
とある事件がきっかけで塁と再び連絡をとるようになって。


そこからの転落のスピードが見事としか表現ができない。
人はこうしてダメなほうに流転するのか
それは破綻の行為とわかっていても
わたしはそれをやめられない
どうしたって塁が好きだというのが
こわいくらいに、
書いてないのに伝わってくるのです。

凪のような一瞬のあとにエンディングとなるのですが
全体的に濃厚で
ジェットコースターのようで
あぶなっかしくて
いとおしくも感じるものでした。
この凪と感じた部分を読むためにすべてがある気さえしました。

なにもかも投げ捨てて
ただお互いのためだけに生きるというのは
実際はできないことです。
だからこそこの話は美しいのだと思います。

白い薔薇の淵まで (集英社文庫)

著者:中山可穂
出版社:‎ 集英社
発売日:2003/10/22


【本日のサムネイル】
結婚式のイラスト「白いバラの花束・ブーケ」
結婚式の最後に花嫁が投げる、バラのブーケのイラストです。
受け取った人はきっと幸せになれるはず!

内容を知ってると、
これはちょっと皮肉かもしれませんね。

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