標本バカ

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ノンフィクション

雑誌「ソトコト」で連載していた標本についてのエッセイをまとめたのが本書です。

著者は国立科学博物館にてモグラについて研究されています。

モグラ研究??標本??と思われると思いますが、著者についてはカバー裏にプロフィール、そして序文に記載されています。

と同時になぜ標本か?標本がいかに大切かが序文に書いてあります。

それ以降はエッセイなのですが、これがまた「標本バカ」のタイトルにふさわしい内容ばかりです。

道端にタヌキが車に轢かれて死んでいる。みなさんなら、どうしますか?

(中略)それよりも「もったいない」という気持ちが強い。(中略)

実際にタヌキについて研究してる人が、世の中には何人もいるのだ。タヌキが車に轢かれていたりすると「もったいない」。これは標本集めの絶好のチャンスだ。

最近タヌキの鎖骨にはまっている。(中略)僕はわりと最近まで、タヌキに鎖骨があるのを知らなかった。タヌキを含む食肉類では、鎖骨は非常に小型化していて、ほかの骨と関節していない。(中略)あとき知り合いの獣医学者から「タヌキにもイヌにも鎖骨はありますよ。すごく小さいですけど」と聞き、それから注意深く肩回りを解剖するようになった。(中略)それ以来、タヌキを解剖するときは鎖骨探しを楽しめるようになった。「そんな小さな骨、残せなくてもいいんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、全身骨格標本と呼ばれる以上、すべての骨を回収するのが望ましい。

知ってる人は知ってるのですが、私はタヌキがすきです。なので本文からタヌキが扱われている例を二つ引用しました。

実際はもっとタヌキについて書いてあります。タヌキは交通事故死(ロードキル)が動物でも一番多いので例として多いのです。(もちろんタヌキ以外様々な種、外来種についても書いてあります。)

交通事故で亡くなったタヌキを回収してその個体を解剖し、その皮を標本にし、残った骨は全身骨格標本にして残す。

これは一見無駄にみえる行為かもしれませんが、そこにタヌキという種がいたこと。

生まれてこれくらいの年齢の個体がいたこと。

それがたくさん集まることで、見えてくることがあります。

この地方のこの種は毛が長い、成長が遅いなど場所や年齢別など比べることでその違いが見えてきます。

それは標本がたくさんあるからこそわかることです。

交通事故死した動物、自然死した動物だけでなく、動物園で亡くなった動物も扱ってます。

その際、「この動物の研究してるあの人にも連絡しよう」、研究者ネットワークで声をかけたりかけられたり、大型動物の場合手伝ったり手伝ってもらったり。

一人ではできない作業が多いようですが、それでも研究者同士の協力で行ってるようです。

「キリン解剖記」の著者である郡司芽久さんの学生時代のエピソードもありました。

昔は親せきのおうちの客間にはく製があったりですがそれが現在は博物館で回収されてる場合もあるそうです。

一見残酷にも見える標本ですが、亡くなってもなおそこから研究することができる。

これからあらわれる未来の研究者たちのために標本を作るということを行ってる。

私たちがしらない仕事の一つだなと思いました。

博物館や動物園の標本みて怖いなあ…と思わずにちゃんと観察しようと思いました。

またエッセイ一つに一枚イラストがあるのですが、これがクスリと笑えたり感心したりするものでかつとても綺麗なのでこちらにも注目してほしいです。

タイトル:標本バカ
著者:川田伸一郎
出版社:ブックマン社

標本バカ

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