今回紹介する本は
「幻肢痛日記: 無くなった右足と不確かさを生きる」
です。
どんな内容の本なの?

12歳から骨肉腫により人工関節だった著者は30歳の時、
HonyaClub より
感染症の罹患を機に太腿から下を切断することを決めます。
前向きな判断でしたが、
やがて噂に聞いた〈幻肢痛〉を体験することになりました。
切断した後の足を火葬して骨壷に入れてもらい、
骨壷を眺めながら考えます。
「無いものの存在」に耳を傾けること。
それは、社会の中で抑圧されるマイノリティや、
不安に苛まれる人の声と重なるのではないか…。
少しユニークな障害受容の話として、
はたまた人が持つ創造力を考える本として。
読み手の感覚や価値観もあやしく揺れ動きはじめる、
不思議な読後感をよぶ一冊です。
そもそも「幻肢痛」ってなんだろう?

幻肢痛(げんしつう、英: phantom pain)は、
怪我や病気によって四肢を切断した患者の多くが体験する、難治性の疼痛。
心身症に該当する。四肢を切断した患者のあるはずもない手や足が痛みだす。
Wikipediaより
例えば足を切断したにもかかわらず、爪先に痛みを感じるといった状態を指す。
あるはずのない手の先端があるように感じる、
すなわち幻肢の派生症状である。
詳しい原因は判っていない。
第1章 幻肢痛の当事者研究

2019年12月3日右足を切断しました。
5日前に右足を切断したこと、なぜ切断したのか
病気のことや幻肢痛についての(当時の)知識と
自身の幻肢痛対策などが書かれています。
第2章 幻肢という「不確かさ」

入院後半から退院して半月ほどの期間の記録です。
幻肢痛という文字には「痛い」が含まれているので
ないはずの痛みというイメージがありますが
ないはずの足がそこにあるとしたら絶対壁などにぶつかってるはずなのに貫通してる
という当事者ならでは感覚が登場します。
第3章 踊り出す義足

退院して約二週間後、リハビリ施設にて義足作成の相談をはじめます。
著者の性格なのか、医療関係者のアドバイスなのか
著者は病気に関して非常に前向きといいますか
病気や切断、義足に関することを積極的に調べていたのだなと思ったパートです。
興味深いのは義足を使ってもそこに幻肢が出現すること。
義足をつけていても足がある感覚がある。
第4章 身体が無くなる可能性

切断したことで世界が広がったこと、
服用している薬による副作用とないものの存在
徐々に義足のある生活に慣れていく過程が書いてあります。
第5章 わからないものをわからないまま

今まで仮の義足だったものを本義足を作る
義足をつくる工程が最終工程に入っていきます。
義足がどのように作られるかという意味でも興味深い章です。
読んでみて

12歳に骨肉腫と診断された著者は
30歳の時に感染症により太ももから下を切断することになりました。
骨肉腫と診断された際に切断の可能性も示唆されていたことから
ポジティブな判断として右足を切断をしました。
この本は切断から義足を使いこなすまでの4年間に起きた
(現在も起きている)幻肢痛
あるはずのない足の痛みやかゆみなどにまつわる現象を記録したものです。
著者の性格なのか、足の切断についてとてもポジティブさが印象的です。
20代はずっと人工関節の炎症による処置をしていたことや
足をひきずっていたことから解放されることに喜んでいます。
切断し、ないはずの部分が痛む「幻肢痛」にも興味津々で
足の存在を感じる、痛み、かゆみなど
足が存在した時よりもなくなってからの方が存在感を感じています。
どんな医師たちが記録していても、
実際自分が体験していることの方がおおきい。
そんな気持ちが文章にもあふれています。
幻肢痛が発生する場所やパターン
この痛みをコントロールすることはできるのか
さまざまな角度から観察しています。
またどのように義足が作られるのかの一連の流れや
その費用について
義足に慣れるためのリハビリなども書かれています。
父の死によって考えたこと、自身の仕事について、
これからも含めて
当事者だからこその視点で
赤裸々に書かれた物語です。
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【本日のサムネイル】
幻肢痛のイラスト
事故や病気などで失った四肢の痛みを感じる、幻肢痛のイラストです。
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