管理人が亡くなり残されたサイト、SNSにまつわる本です。
- どんな内容なの?
- 第一章 高校2年で死を受け入れた人の声―ワイルズの闘病記
- 第2章 京大院生が残した剥き出しの思考―ヨシナシゴトの捌け口
- 第3章 安寧を探し求めた先の諦観、そして自殺―気味が悪い、君
- 第4章 大量の吐血の後に吐き出した覚悟のブログ―日本一長い遺書
- 第5章 4代にわたって引き継がれている個人のサイト―轟木敏秀のホームページ
- 第6章 死を覚悟した空手家ベーシストの軌跡―中鉢優香バッチ/Instagram
- 第7章 41歳で余命を知った医師が残した死への記録―肺癌医師のホームページ
- 第8章 オンラインに生きた人間が刻んだ極限の生き様―一撃確殺SS日記
- 第9章 2012年9月に凝縮された人生―自殺願望者の記録
- 第10章 “肺がんオヤジ”が残した終わらないブログ―がんと共に生きる!ブログ
- 第11章 糖尿病の怖さを伝える20年前の個人サイト―落下星の部屋
- 第12章 永久保存を望むサイトは3年で消えた―クール!だね、ジャパン
- 第13章 1万冊の闘病記を集めた男の人生―パラメディカ
- 第14章 90歳ブロガーが残した孤独と自由と長寿観―さっちゃんのお気楽ブログ
- 第15章 娘を殺された父がブログを綴る理由―SA・TO・MI~娘への想い~
どんな内容なの?
【あらすじ】
HonyaClub より
いわゆる「闘病ブログ」やそれに類するホームページ、
日々を綴ったSNSの残された投稿からは、
故人が生前に抱いた死に際しての本音が聞こえてくることがある。
一歩踏み入れた先には、ごく近い家族ですら聞けなかった、
本音が広がっている可能性もある。
絶えずファンが“墓参”し追悼が続いているケースや、
放置されずに何代にもわたって運営が継続され、
守り続けられているサイトもある。
インターネットと「死」をとりまく環境は時代によって大きく変化していく。
消えずに残された過去は、
生きている私たちの現在と未来をどう方向づけるのか?
故人がインターネットに残した足跡とどう向き合うのが正解なのか?
空間や時間をこえて届いた鮮烈なメッセージに耳を傾ける。
第一章 高校2年で死を受け入れた人の声―ワイルズの闘病記
2010年T細胞型急性リンパ性白血病により17歳で亡くなった「ワイルズ」さんのブログです。
本人が直接更新できなくなった後、両親が引き継がれました。
小学3年の時急性リンパ性白血病を初発し、その後もいろいろ病気が発見
「死んでたまるか」という気持ちが綴られています。
生前に友人や恩師にむけて手紙が残されていたのも印象深いです。
またブログをまとめ書籍として出版もされています。
穂積良洋
※「ワイルズの闘病記」を改訂し、文庫化したものです。
第2章 京大院生が残した剥き出しの思考―ヨシナシゴトの捌け口
2021年がんにより23歳で亡くなった山口雄也さんのブログです。
京都大学に入学して数か月後にがんの発症が告知されました。
Twitter、note、闘病ブログとあわせて4つの発信源を利用されていました。
一章のワイルズさんのように山口さんもブログの書籍化をされています。
山口雄也
第3章 安寧を探し求めた先の諦観、そして自殺―気味が悪い、君
2013年自殺により32歳で亡くなった?「ブキミオトコ」さんのブログです。
1年3ヶ月ほどの更新ですが自身の半生や、
なぜ自殺しようと思い至るのかなど書かれています。
(自殺をほのめかしているサイトは多いですが、
ほとんどが匿名で書かれているため本当かどうか知ることはできません。)
第4章 大量の吐血の後に吐き出した覚悟のブログ―日本一長い遺書
2009年スキルス胃がんにより33歳で亡くなった「のんさん」のブログです。
夫とは離婚、後子どもの親権を調停中
実家の母親は彼女の病気を知ると保険金のことしか話さない。
誰も彼女とその息子の今後について心配する人がいない。
そんな絶望的な状況で、息子に残そうと書かれたブログです。
死後一定数の期間のち友人の手で削除されるはずでしたが、
今も閲覧することが出来ます。
第5章 4代にわたって引き継がれている個人のサイト―轟木敏秀のホームページ
1998年筋ジストロフィー症により35歳で亡くなった「轟木敏秀さん」のサイトです。
6歳で筋ジストロフィーと診断。
小学6年の二学期に入院した病院が終の棲家となってしまいます。
病院内でも興味のあるものは何でもチャレンジし、そのひとつとして
パソコン通信などをされていました。
マスターベーションや死について、出生前検診など、鋭くテーマを投げかけています。
轟木さんが亡くなったのち、当時の主治医などの手によって
現在も閲覧することが出来るようになっています。
第6章 死を覚悟した空手家ベーシストの軌跡―中鉢優香バッチ/Instagram
2021年がんにより37歳で亡くなった「中鉢優香バッチさん」
Twitter、Facebook、Instagram、ブログとあわせて4つの発信源を利用されていました。
がんが宣告されてからもバンド活動や空手を積極的に行い
かつ結婚もされました。
全く泣き言を書かない、常に前向きな姿勢が精神力の強さを物語っている記録です。
サイト、ブログだけでなくSNSも複数使われていたのが
最近の傾向ですね。
第7章 41歳で余命を知った医師が残した死への記録―肺癌医師のホームページ
2002年がんにより42歳で亡くなった「どじつきさん」のサイトです。
内科医だったどじつきさんは自分の病気が難しいことを知ると
自らの専門病気などコンテンツを充実させたサイトを公開。
それと同時に家庭内の整理も進めていきました。
末期症状で脳転移による精神症状があらわれたらサイトを終わると
線引きを決めていたのが、医師らしいと思いました。
こちらのサイトは書籍化もされています。
第8章 オンラインに生きた人間が刻んだ極限の生き様―一撃確殺SS日記
2020年大腸がんにより亡くなった「マイディー」さんのブログです。
「ファイナルファンタジー14 光のお父さん」の元ブログとしても有名だそうです。
オンラインゲームは楽しい!を伝えるブログでしたが、がんが見つかってからは
その記載も増えていき、ブログの更新にこだわり続けました。
マイディー
第9章 2012年9月に凝縮された人生―自殺願望者の記録
2012年自殺により亡くなった?方が残したブログです。
3章にある「ブキミオトコ」さんとは異なるのが、ハンドルネームさえ記載がありません。
その文章から40~50代の男性と思われます。
いちど自殺を試み母親が眠る墓地まで向かいましたが
途中で保護されて後日、更新されてから書き込みはされていません。
第10章 “肺がんオヤジ”が残した終わらないブログ―がんと共に生きる!ブログ
2017年肺がんにより50歳で亡くなった「hiroさん」のブログです。
管理人だったhiroさんが亡くなった後そのまま閉鎖ではなく、
仲間たちが各々に記事を書き続けているというユニークなブログです。
夢が「家族」だったというhiroさんの気持ちが仲間に伝わって
それが今も更新されているのでしょう。
第11章 糖尿病の怖さを伝える20年前の個人サイト―落下星の部屋
2002年糖尿病により52歳で亡くなった「落下星さん」のブログです。
糖尿病の恐ろしさを赤裸々に書いたブログとして有名ですね。
落下星さんが亡くなったのち、友人が自身のサイトに使っていたプロバイダーに移動
さらにその後無料で使えるサイトに移動され、現在閲覧ができるようになっています。
第12章 永久保存を望むサイトは3年で消えた―クール!だね、ジャパン
2013年がんによりなくなった「小田和朗さん」のブログです。
ずっと残ってほしいと願っていた別ブログは現在閲覧はできません。
使用していた無料ホームページサービスが、そのサービスを終了したためです。
自らが書いたものが、インターネットに半永久的に残るであろうと
思われていたことがありましたが現在はそのサービス終了と共に閲覧ができなくなることが
当たり前になりつつあります。
第13章 1万冊の闘病記を集めた男の人生―パラメディカ
2016年大腸がんにより63歳で亡くなった「星野史雄さん」のサイトです。
配偶者の病をきっかけに闘病記を集めるようになり
闘病記専門古書店「パラメディカ」をオープン。
星野さんが亡くなったのち、生前関わっていたNPOがその意思を引き継いでいます。
星野さんの活動は書籍にもなっています。
第14章 90歳ブロガーが残した孤独と自由と長寿観―さっちゃんのお気楽ブログ
2016年心筋梗塞により94歳で亡くなった「堀江幸子さん」のブログです。
2006年84歳でブログをはじめ、亡くなる直前まで
ほぼ毎日自作の絵画に文章を添えた日記を更新されていました。
1921年に生まれた堀江さんは戦争体験者。
その節目の時期に当時のことを綴っていました。
現在は弟のsyunさんが引き継いでブログの更新をされています。
こちらのブログは書籍化もされています。
堀江幸子
第15章 娘を殺された父がブログを綴る理由―SA・TO・MI~娘への想い~
これは他のブログとは異なり
最愛の娘が突然殺され、その情報を集めるために始めたブログです。
事件発生から13年と6カ月。
犯人は逮捕されましたが、世の中に誤解されたまま亡くなった娘のために
現在も更新が続けられています。
読んでみて
11章にも書きましたが
インターネットに書いたものは永久的に読める
と思われていた時期がありました。
実際はそのサービスが提供されなくなった時や
レンタルサーバー代が支払われなくなった時
閲覧ができなくなります。
このサイトもConohaさんのレンタルサーバーを利用しているので
代金が支払われなくなったら消えてしまいます。
そんななかで、この15のサイトは現在も閲覧ができます。
コメント欄が閉鎖されていたり、管理されていたりすることで
荒れることなく読むことが出来ます。
自分が亡くなった後で読まれ続けることは
本人が希望していない場合もありましたが
それを読み、もうその人がいないことに
感じることがあるのではないでしょうか。
著者の本に「故人サイト」という著書もあります。
こちらも亡くなった方々のサイトについてのものですが
さらに読んでみたいかたにはお薦めです。
著者:吉田雄介
出版社:光文社
発売日:2022/3/16
【本日のサムネイル】
いろいろな水引のイラスト(白黒)
結び切り
お葬式などの不祝儀で使われる、白黒の帯紐で飾られた水引のイラストです。
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