大英自然博物館珍鳥標本盗難事件

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ノンフィクション

【初回公開:2020/08/17 (Mon) 09:28】

大英自然博物館珍鳥標本盗難事件
カーク・ウォレス・ジョンソン 著
矢野真千子 訳

読後ものすごくもやもやした。
いまももやもやしてる。
犯罪を犯しても罪に問われないこと。
加害者は名前を変えて社会的成功をおさめていること。
被害者はあきらめてる。
では何のためにそれが保管され続けているのか。
関係者たちが犯罪とわかっていながら類似のことを行っているかもしれないこと。

この話は三部構成になっている。

生物を収集して標本にしたアルフレッド・ラッセル・ウォレス。
このウォレスは標本を整理しわかりやすく分類分別した最初の人物です。

事件の犯人であるエドウィン・リストの人生。
事件を起こすまでの彼の人生について。

事件後。
事件を知って調査を行った著者の人生と、
事件にまつわる人たち、またその後。

釣りに用いる毛針を作る文化。
希少種、もしくはもう絶滅してしまった生物のはく製を保管するという学術的文化。
どちらかが優先されるか。
個人的には失われてしまった生物のはく製と思うのだが
毛針をつくるのもこれもまた文化の一つと思いたい。
ルールを無視して、自分の私利私欲に走ること
それによって得、もしくは利益を得られる人がいること。
ノンフィクションを読むといつも自分が能天気か痛感する。
正義とか正しいことは机上の空論であって
「どうしようもないこと」が世の中に氾濫している。
それをまた痛感させられた。

タイトル:大英博物館珍鳥標本盗難事件
著者:カーク・ウォレス・ジョンソン 翻訳:矢野真千子 
出版社:科学同人

大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件: なぜ美しい羽は狙われたのか

【2020/12/07追記】

この本は標本の歴史と毛針の歴史そして盗難事件というみっつを扱った内容です。

エドウィン・リストは博物館から珍しい鳥の剥製を盗み出し、それを用いてフライ・フィッシングの毛針を作った。

貴重な剥製がズタズタにされ、かつそれらが売却された。

2009年のことでエドウィン・リストは現在違う名前で演奏家として暮らしている。

そして罪に問われてはいない。

剥製のほとんども戻ってはいない。コミュニティにて販売した疑惑がある人がいても捜査がされていないことが腹だたしい。

剥製がなぜ大切か。もう絶滅してしまった鳥や絶滅危惧種が多数あったのだ。

いつの時代どこにどの鳥がいたのか。雄か雌か。年齢はどれくらいか。

今はみることのできないものが剥製という形で見ることができる貴重なものという意識がないのが残念に思う。

とはいえ私自身も「標本バカ」を読んで標本、剥製、全身骨格標本の大切さを知ったのですが。

少し分厚い本ではありますが、ぐいぐい読ませる内容でお薦めです。

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