三津田信三氏の幽霊屋敷シリーズ
その第一弾です。
どんな内容なの?
著者と思わしき同じ名前の作家が
三間坂秋蔵という編集者から渡された
どこか似ている…というその五つの話を読み
その謎に挑むという物語です。
五つの話
この編集者は怪談を蒐集するのが趣味で
そのせいか?
叔母の元に不思議なノートや
祖父の蔵から原稿が…と
集まったものを今回著者に読んでもらい
「なぜか似ている」というそれらについて
意見を聞きたいというものです。
・一つ目の話 向こうから来る 母親の日記
戸建てに引っ越してきた家族。
父親、母親、三歳の娘。
でもなぜか時々薄暗く感じる。
毎日掃除しているのに、なぜか部屋の隅にホコリがたまっている。
娘が子ども部屋でひとりで話すようになった。
時折
「じゃっ…じゃっ…」
という音が聞こえるようになった。
誰かの視線も、薄暗さも、ホコリも、なんだかおかしい…
そんななか、公園で同年代の子どもを連れた母親と知り合いになる。
そしてその子どもは頻繁に遊びに来るようになったのだが…。
・二つ目の話 異次元屋敷 少年の語り
代々大工をしている鉋太(ほうた)
尋常小学校の先生に成績がよいことをほめられ
さらに高等小学校に進学を薦められる。
ですが父親はそれを許しません。
それを知った鉋太は学校からまっすぐ帰らず
友人らに遊ぼうと持ち掛けます。
「祈願の森」と呼ばれる奇妙な森の奥で
友人らとかくれんぼうをはじめます。
でもすぐに二人が抜けて帰り
気付いたら周囲には誰もいません。
そんななか、彼は長襦袢を身につけた女性を見つける。
・三つ目の話 幽霊物件 学生の体験
地方の大学に入学し、一人暮らしの為にワンルームのアパートに入居した。
最寄駅からのアクセスもよい、駐車場もついているのに家賃がやすく、
それなのに空室が多いのだ。
なんだかおかしい
そう思っていたら真夜中に
パチ、パチッ
そんな音が聞こえるようになった。
ある真夜中、思い切ってその音をつきとめようと
外に出た彼は、あるものを目撃してしまう。
・四つ目の話 光子の家を訪れて 三女の原稿
新興宗教にはまった母を取り戻すためにと、向かった父と姉たちは
結局その宗教に取り込まれてしまった。
私は弟を守ろうと必死だったけれど、
あくるひ小学校から帰ると、お隣のおばさんが
母が弟を連れて行ったことを教えてくれた。
そして「儀式をするからきなさい」との連絡が。
結局夕方遅くなってから、私はその「光子の家」に忍び込んだ。
弟を取り戻そうと思った。
けれども忍び込んだ家には儀式中だというのに
誰一人としていない。
異様な雰囲気のその家の中を私は弟を探しに歩き出した。
そこで変な張り紙を目にするのだった。
・五つ目の話 或る狂女のこと 老人の記録
13歳の時行方不明になった亀代子が、一週間後に発見された。
神隠しにあった子どもが発見された時、精神が壊れていたことが多かったが
彼女は五体満足であった。
それ以降屋敷にこもってる彼女に対して
「御山の神様の子を身ごもっている」
と噂が流れた。
実際彼女は身ごもっており、蔵の中で出産する。
赤ん坊は名前を付けられることなく、蔵の中で使用人に育てられた。
四歳になっても歩く話すことが出来なかったため、
心身ともに強い障害があると思われていた。
あくる日の夕方、子どもの姿が突如と消えた。
そして見つかったのが山の祠の前だった。
その日からその子どもの様子ががらりとかわって…
読んでみて
二つ目の話と
三つ目の話の後に
それぞれ「幕間」があります。
それでは各話を読んだ著者と編集者の感想や
気付いたことなどが書かれています。
五つ目の話の後の終章で
著者はこれらの話の怪異はすべて同じ存在では?
と結論付けています。
話し合いはどんどんエスカレートし
最期に編集者はこれらに憑かれたような雰囲気へとなっていきます。
なぜ彼はそうなってしまったのか。
これらの話はなぜ同じ雰囲気なのか。
もう一度読んでみたくなることでしょう。
【あらすじ】
HonyaClub より
三間坂という編集者と出会い、
同じ怪談好きとして意気投合する作家の三津田。
その縁で彼の実家の蔵から発見された
「家」に関するいくつかの記述を読むことになる。
だが、その五つの幽霊屋敷話は、
人物、時代、内容などバラバラなはずなのに、
奇妙な共通点が…。
しかも、この話を読んだ者の「家」には、
それが訪れるかもしれないらしい。
最凶の「幽霊屋敷」怪談!
著者:三津田信三
出版社:中央公論社
発売日:2014/8/8
【本日のサムネイル】
家・建物のイラスト「1階建て一軒家」
かわいい赤い屋根の一階建ての家イラストです。
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