【かつては常識だったモノも】奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

その他の本

14冊の「奇書」と呼ばれた本についてかかれたものです。

どんな内容なの?


読者の評価がはっきりとわかれるという「奇書」
かつては「良書」といわれていても、
現在はそれが誤りだった、
またその逆というものもあります。

魔女に与える鉄槌(ハインリヒ・クラーメル著・ヤーコブ・シュプレンガー著)

魔女狩り

この本がきっかけで魔女狩りが本格化することに…。
著者は異端審問官であったハインリヒ・クラーメル。
この一連の異端審問によって犠牲者は10万人にものぼりました。

台湾誌(ジョルジュ・サルマナザール著)

台湾の九份

17、18世紀当時の台湾の様子を伝える文献、
ですが、著者の妄想をもとに書かれています。
修道士といつわりヨーロッパ各地を放浪していた際にきいた異国の話から
日本人、そして台湾人といつわりペテン師として活動、
書かれたのが本書です。

ヴォイニッチ手稿

ヴォイニッチ手稿

古物商ウィルフリド・ヴォイニッチによって再発見された、
全編手書きの古文書。
手稿が何の言語で書かれているのか不明なことでも有名です。

野球と其害毒(新渡戸稲造ほか著)

新渡戸稲造の似顔絵

1911年8月29日~9月19日まで
東京朝日新聞にて全22回にわたって掲載されたコラムです。
当時国内でブームとなっていた「野球」についての批判をまとめたもの。
新渡戸稲造をはじめ当時の有名校の校長などが書いています。

穏健なる提案(ジョナサン・スウィフト著)

アイルランド共和国の国旗

正式名称は
「アイルランドの貧民の子供たちが両親及び国の負担となることを防ぎ、
国家社会の有益なる存在たらしめるための穏健なる提案」
著者は「ガリバー旅行記」など冒険小説の著者としても有名です。
貧困層に生まれた赤ん坊が一歳になった時、
富裕層の食糧として高額で販売しようとの提案がされていますが、
もちろん皮肉で書かれました。

天体の回転について(ニコラウス・コペルニクス著)

コペルニクスの似顔絵

コペルニクスが書いた地動説に関する本。
今では常識ですが、当時は天動説が一般的でした。

非現実の王国で(ヘンリー・ダーガー著)

作家・小説家

正式名称は
「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、
子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語」
病院の清掃員だった著者が18歳から亡くなるまでの間
人に知られることなくかいた物語です。

フラーレンによる52Kでの超伝導(ヤン・ヘンドリック・シェーン著)

科学者

超電導に関する科学論文。
そのアプローチ方法に誰もが著者をカリスマとたたえました。
しかしほかの誰にも再現不可能だったこと、
論文に具体的な実験方法が記載されていませんでした。

軟膏を拭うスポンジ(ウィリアム・フォスター著)そのスポンジを絞り上げる(ロバート・フラッド著)

怪我をしている男の子

刃物でケガをした時、傷口に薬を塗ったり絆創膏を貼ったりしますが
16~17世紀西欧の一部では
傷を負わせた武器や刃物に軟膏を塗ることで
傷口が治ると信じられていました。
これが「武器軟膏」という治療法で、それについての論文です。

物の本質について(ルクレティウス著)

ローマの真実の口

世界の物質の在り方や、人の生き方について語った
物理の教本と人生論を合わせた哲学書です。

サンゴルスキーの『ルバイヤード』(ウマル・ハイヤーム著 フランシス・サンゴルスキー装丁)

虹色の鉱石

1911年イギリスの書籍装丁会社が作った宝石を用いた豪華本です。
読むことよりも所有することに価値があった時代に
「美術品」として作られました。
悲劇の本としても有名です。

椿井文書(椿井政隆著)

近畿地方の地図

近畿地方の山城、大和、河内、近江の広範囲にわたって現存する古文書。
地方の歴史書や古文書などを捏造し、さらにその古文書に載っている地図なども捏造…
と広範囲にわたって捏造をされていました。
現在も地域史に混在し続けています。

ビリティスの歌(ビリティス著 ピエール・ルイス著)

古代ギリシアの男性

19世紀末にドイツの古典学者ハイムが発見した古代ギリシア時代の散文詩集、
といわれていますが、実は著者による完全創作物です。
自らが書いたギリシア古典風作品を古典学者に送りつけ
発見(?)となりました。

月世界旅行(ジュール・ヴェルヌ著)

月面バギー

世界初の本格SF小説。
月に行くための方法や計画のための機材など冒険部分よりも
冒頭の計画部分を緻密に書くなど
科学的知見が導入されていました。
これをよんで研究者になった方もいますよ。

読んでみて

どの本も
「当時はこれが常識!!」
となっていますが、現在はそれらは科学的に覆されています。
当時「これおかしくね?」と思っていても黙っていた人も多かったのでは…?
と思ったものもありました。
あらためて、「スポンジ」論文で対決している「武器軟膏」が
ものすごく恐ろしいです。
なぜこれが常識だったのでしょうか…
また「ビリティスの歌」
古代ギリシア時代の作品として古典学者が認定してしまったのは
「知らないとは言えない」学者の性質を逆手に取ったわけですが
この時著者はスカッとしたことでしょう。


私たちがいま当たり前のことが
数年後のちに「実は正しくはなかった」となるかもしれません。
実際そういう事例もみかけます。
それだけにこの「奇書」たちを読んで
ただ「おもしろーい!」ではないな、と感じました。
今後「穏健なる提案」のようなものが出てこないとよいのですが…


【あらすじ】
これは良書か、悪書か。
時代の流れで変わる、価値観の正解。
ロマン、希望、洗脳、欺瞞、愛憎、殺戮―1冊の書物をめぐる人間ドラマの数々!

【目次】
魔女に与える鉄槌
 ~10万人を焼き尽くした、魔女狩りについての大ベストセラー
台湾誌
 ~稀代のペテン師が妄想で書き上げた「嘘の国の歩き方」
ヴォイニッチ手稿
 ~万能薬のレシピか? へんな植物図鑑か? 未だ判らない謎の書
野球と其害毒
 ~明治の偉人たちが吠える「最近の若者けしからん論」
穏健なる提案
 ~妖精の国に突き付けられた、不穏な国家再建案
天体の回転について
 ~偉人たちの知のリレーが、地球を動かした
非現実の王国で
 ~大人になりたくない男の、ネバーエンディングストーリー
フラーレンによる52Kでの超伝導
 ~物理学界のカリスマがやらかした“神の手”
軟膏を拭うスポンジ / そのスポンジを絞り上げる
 ~奇妙な医療にまつわる、奇妙な論争
物の本質について
 ~世界で最初の快楽主義者は、この世の真理を語る
サンゴルスキーの「ルバイヤート」
 ~読めば酒に溺れたくなる、水難の書物
椿井文書
 ~いまも地域に根差す、江戸時代の偽歴史書
ビリティスの歌
 ~古代ギリシャ女流詩人が紡ぐ、赤裸々な愛の独白
月世界旅行
 ~1つの創作が科学へ導く、壮大なムーンショット

HonyaClub より

奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

著者:三崎律日
出版社:KADOKAWA
発売日:‎ 2019/8/23


【本日のサムネイル】
書斎のイラスト(背景素材)
本が並べられた本棚と
電気スタンドの置かれた大きな机が置かれた書斎のイラストです。

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