今回紹介する本は
「教誨師」
です。
「きょうかいし」と読みます。
どんな内容の本なの?

50年もの間、死刑囚と対話を重ね、
HonyaClub より
死刑執行に立ち会い続けた教誨師・渡邉普相。
「わしが死んでから世に出して下さいの」という約束のもと、
初めて語られた死刑の現場とは?
死刑制度が持つ矛盾と苦しみを一身に背負って生きた僧侶の人生を通して、
死刑の内実を描いた問題作!
第1回城山三郎賞受賞
教誨師(きょうかいし)ってなあに?

受刑者に対して教誨・教戒を行う者は、教誨師・教戒師(きょうかいし)という。
Wikipediaより
矯正施設における教誨には「一般教誨」と「宗教教誨」がある。
一般教誨の内容は、道徳や倫理の講話などで、刑務官・法務教官などが行う。
宗教教誨の内容は、宗教的な講話や宗教行事で、
各宗教団体に所属する宗教者(僧侶・神職・牧師・神父など)によって行われる。
一般教誨は全ての受刑者に参加の義務があるが、宗教教誨は日本国憲法に定める信教の自由の観点から自由参加である。
序章 坂道

三田の丘の上にあるお寺。
「この話は、わしが死んでから世に出してくださいの」
頑なだった渡邉普相が態度を崩したのは、著者と同郷というささいなことからだった。
第1章 教誨師への道

婿入りし東京の寺へとやってきた渡邉普相は
とある僧侶と出会う。
篠田龍雄という僧侶は義父の寺で定期的に法座で話をしにやってくる。
次第にその法座を楽しみに待つようになった。
第2章 ある日の教誨室

初めて東京拘置所に足を踏み入れて7年
脱走者である山本
大ベテランで三鷹事件の竹内
女性死刑囚の小林カウ
新顔の木内
この四人が中心に書かれています。
第3章 生と死の狭間

渡邉普相がどのような場所で産まれ育ち
どのような青春時代を送り
東京に来たのか
その半生が書かれています。
第4章 予兆

死刑囚たちは、教誨室内で様々なことを話す。
その中で誰にも話してはない殺しのことまでも話すものがいる。
殺しの理由は様々なものがある。
親に気にかけてほしい
それだけで行われることもある。
第5章 娑婆の縁つきて

田中伊三次氏が法務大臣になり、執行ラッシュが起こる。
それまで年5人ほどだった死刑執行が、
当時二カ月だけで27枚もの執行命令書にサインがされている。
多い日で一日3人
渡邉普相は次第に精神のバランスを崩していく。
第6章 倶会一処

死刑が執行されて荼毘に付されても、その遺骨は家族の元へ戻るとは限らない。
受け取り拒否をされるケースもあるのだ。
2000年に入り、渡邉普相は朝から浴びるように酒を飲むようになっていた。
終章 四十九日の雪

渡邉普相が見つめた死は、どれも自然の摂理がもたらしたものではなかった。
読んでみて

死刑囚となった人と唯一会って話すことが出来るという教誨師。
神や仏の説教をし、その人に反省や自分の人生を顧みる手伝いを行う。
執行されるときは立ち会うこともある。
これは完全ボランティアで行われる。
拘置所という場所、死刑囚とその死刑執行。
そういうものがある。
悪いことをしたからそこにいて執行される。
とはわかっていても、実際どのようなことが拘置所で行われているのかはわからない。
だからこそ生前の渡邉普相のもとに、それを知りたくジャーナリストが押し寄せていたのだろう。
興味本位で手に取った自分も彼らと同じでは、と
冒頭に身が引き締まる思いがした。
渡邉普相の生い立ち、
それにまつわる計画、
篠田僧侶との出会い、
教誨師という活動と、死刑執行。
こんなにも人は他人のために生きれるのだろうか
その負荷がアルコールに溺れるということにもなってしまったのだが
それさえもプラスとなってしまう。
死刑囚の彼らからすれば
「お坊さんでさえアル中になる」「人間味がある」と
一人の人間として受け入れられたのである。
決して人を殺してはいけない。
しかしその影で人はいろいろな気持ちがある。
複雑な人生がある。
教誨室という場所で死刑囚と話すことで人となりを知った教誨師が
その死に立ち会う。
なんと辛い仕事なのか。
人生を通してその仕事を全うした渡邉普相の生き方に
生きるとは、罪を償うとは何だろうかと考えずにはいられない。
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