イギリスの南端、ブライトンという町に住む著者が
息子の中学生活をかいたものです。
もう有名すぎて書かなくてもいいレベルですが
最近続巻が発売されたので読んでみました。
カトリックの小学校から地元の「元」底辺中学校に通う息子。
学校見学会での自由な様子を気に入った母に対し、
息子自身は全く興味がなかったのに
友人がそこに決めたということで、自分もと。
そんなノリで学校きめてもいいのか、と思っていたら
父が反対。
「生徒が白人だらけだから」
「カトリック学校は自分らのような労働階級での入学は難しい。
いま小学校に通ってるならそのままいけるのに
その幸運をすてるのか?」
日本では考えられないくらいはっきりいうことにもびっくり。
労働者階級という考えと、宗教的な学校は階級が上というもの
日本にはなじみがありません。
このように、全く異なる文化に囲まれて話は進みます。
学校に入学し、放課後に友人と帰宅中
知らない車が横に止まって、急に罵声をいってきたり
友人となった子が差別的発言を当たり前にクラスメイトにいったり。
肌の色が違う、
出身国が違う、
宗教が違う、
労働環境が違う、
些細な違いに、差別をする。
息子はトラブルにあうたびに、時に年齢以上に冷静に母に問います。
母である著者もまた、アジア人(日本人)というだけで
見知らぬ人から街角で罵倒されたことがあります。
そういうときにやり過ごすコツや考え方を
母として、人生の先輩として息子に伝えます。
英国では見た目がアジア人として、
日本ではガイジンとして差別される。
「ガイジン」という言葉が差別ということを
私たちは知識で知っていてもつい言いがちです。
不当なことを言われ、それに対して怒るのは簡単です。
でも「なぜこういうことをするんだろう」
「どうすればいいんだろう」
そう考える息子の素晴らしさよ。
簡単ではないけれども
自分の手の届く世界でどうすればいいか
考えた些細なことをやってみる。
簡単なようで難しいことをやっている息子に感心、
時にほほえましく思います。
日本にしか住んだことがない人は
読んだほうがいい本です。
出身や宗教など、そういうものではなく
ひとりの個人とみる。
当たり前のようにみえて、難しいことです。
世界は私たちが認識している以上に複雑に動いていることを
痛感しました。
【目次】
大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽々と飛び越えていく。
優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。
人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。
時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。
世界の縮図のような日常を、
思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、
ともに考え悩み乗り越えていく。
落涙必至の等身大ノンフィクション。1 元底辺中学校への道
Honyaclub より引用
2 「glee/グリー」みたいな新学期
3 バッドでラップなクリスマス
4 スクール・ポリティクス
5 誰かの靴を履いてみること
6 プールサイドのあちら側とこちら側
7 ユニフォーム・ブギ
8 クールなのかジャパン
9 地雷だらけの多様性ワールド
10 母ちゃんの国にて
11 未来は君らの手の中
12 フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13 いじめと皆勤賞のはざま
14 アイデンティティ熱のゆくえ
15 存在の耐えられない格差
16 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリ
著者:ブレイディみかこ
出版社:新潮社
発売日:2019/6/21
【本日のサムネイル】
通学している男子学生のイラスト(ブレザー)
楽しそうに通学(登校・下校)をしている、
ブレザーの制服を着た男子中学生・男子高校生のイラストです。
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