【弔うということについて】土葬の村

ノンフィクション

1990年代はじめから葬儀について聞き取り調査をしている著者が
土葬をはじめとした葬儀という文化とその変化についてまとめたという
類を見ないものです。

土葬、野焼き火葬、風葬
それらにまつわる怪談についての4章から構成されています。
ですが一章である「土葬」についてがとにかく濃いです。
自宅から墓地まで遺体を運ぶ「野辺送り」、
映画のモデルとなった土葬が行われていた土地の、葬儀の変化
珍しい神式の土葬、
そして文字だけだと衝撃的な「49日後に墓をあばく」風習や
現在行われている市民によるあたらしい土葬まで
多角的に「土葬」を紐解いています。

そもそも「土葬」は法律では禁止されていません。
(自治体条例で禁止になっている場合があります)
ここ半世紀、火葬場が整備されて普及されましたが
それ以前、実は地元では野焼き火葬が当たり前で
持ち回りでその担当になっていたと聞いたことがあります。
(今から40数年前まで)
実際「ここの奥で野焼きしていたんだよ」と言われたこともあり
野焼き火葬の項目は特に興味深かったです。



また地元の葬儀では出棺時に、喪主が位牌をもち、遺影は喪主の妻が
棺はその親戚いとこが、お花や供物などを家族が持ち
セレモニーホールの会場からその前に駐車してある霊柩車まで
短い距離でありますが葬列を組みます。
この時葬列の順番、なにを持つかでものすごくもめます。
ここでうっかり大叔父大叔母を供物もち(シモ)にしてしまったら、
いやがらせを受けたりもいまだ現役です。
この葬列は土葬の時喪家から墓場まで棺を運ぶ野辺送りの形がかわって
伝わってるのだと思います。

あまりなじみのない風葬。
与論島や沖縄などの独特な送り方はとても興味深いものでした。
本書にはアイヌの事例は掲載されていなかったので
ちょっと気になりました。

人が亡くなるということ。
それを送り出すことは、ひとつの文化であり
その土地の大切な一部になっていたのだと
それが形をかえ、今の火葬に変わっていくのは
おもしろいなと思いました。



【あらすじ】

これは恐らく、現存する最後といっていい土葬の村の記録である。
村人は、なぜ今も「土葬」を選ぶのか?

日本の伝統的な葬式である「土葬・野辺送り」が
姿を消したのは、昭和の終わり頃とされている。
入れ替わるように火葬が増え、現在、日本の火葬普及率は99.9%を超える。
土葬は、日本の風土から完全に消滅してしまったのだろうか?

筆者は「土葬・野辺送り」の聞き取り調査を30年にわたって続け、
平成、令和になっても、ある地域に集中して残っていることを突き止めた。
それは大和朝廷のあった奈良盆地の東側、茶畑が美しい山間にある。
剣豪、柳生十兵衛ゆかりの柳生の里を含む、複数の集落にまたがるエリアだ。

日本人の精神生活を豊かにしてきた千年の弔い文化を、
まだ奇跡的に残る土葬の村の「古老の証言」を手がかりに、詳らかにする。

【本書の内容】
はじめに
第一章 今も残る土葬の村
第二章 野焼き火葬の村の証言
第三章 風葬 聖なる放置屍体
第四章 土葬、野辺送りの怪談・奇譚
おわりに

土葬の村 (講談社現代新書)

著者:高橋繁行
出版社:講談社
発売日:2021/2/17




【本日のサムネイル】
棺・棺桶のイラスト(和式)
火葬のお葬式で使われる、木製の棺のイラストです。

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