奥田英朗の小説短編集です。
どんな内容なの？
【あらすじ】
ある理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。
生活を満喫するも、そこで出会ったのは（「海の家」）。早期退職の勧告に応じず、
追い出し部屋に追いやられた男性が、新たに始めたこととは（「ファイトクラブ」）。人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。
恋愛相談に訪れた先でのアドバイスとは（「占い師」）。五歳の息子には、新型コロナウイルスが感知できる？
パパがとった究極の対応策とは（「コロナと潜水服」）。ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れ乗り出すと
、不思議なことが次々に起こって（「パンダに乗って」）。コロナ禍の世界に贈る愛と奇想の奥田マジック。
HonyaClub より
紙の本にだけ、作中の登場曲が楽しめるＳｐｏｔｉｆｙのプレイリスト付き！！
・海の家
49歳の小説家、村上は妻の不貞により、ひと夏のみ限定の別居をすることにする。
避難先に選んだ葉山の別邸は古いながらも立派な家屋で
村上は仕事をそっちのけで秋には取り壊されてしまうそこの手入れを行う。
引っ越した初日から村上はある違和感を感じていた。
・ファイトクラブ
早期退職の勧告に最後まで抵抗していた男たちは
郊外の工場にあるプレハブ小屋で警備員の真似事をさせられていた。
ある日定時すぎなんとなくプレハブ小屋にあったコンテナをみると
様々なトレーニング機器があることに気づいた。
リストラ目前の彼らは定時終了後にそのトレーニング機器をなんとなく使うことに…
・占い師
プロ野球選手の恋人が入団三年目にして活躍をみせてきた。
麻衣子はフリーアナウンサーだったが、恋人からのプロポーズ、
そしてセレブな暮らしを夢見ている。
だが恋人は麻衣子の気持ちに応えることはなく、それに不満をかんじる。
そんな中事務所の女社長からとある占い師を紹介されて訪問することに。
・コロナと潜水服
息子が不思議な能力を持っていることに気づいたのは
世の中に新型コロナウイルスという感染症が蔓延してからのこと。
康彦は在宅で仕事をし、息子の世話をしている。
妻は妊娠中であるが、区役所職員のため出勤をしている。
なので康彦はずっと息子の世話をしている。
ある日急に康彦の母、バアバに電話がしたいと騒ぎ出した。
・パンダに乗って
55歳の直樹は二台目の車を買うことにした。
長い間夢だった初代フィアット・パンダ。
探した末にパンダは新潟にあった。
新潟まで訪問し、そのパンダに乗った直樹は目的地とは全く異なる場所に
カーナビによって誘導された。
そこで食事を終え再び車に乗り込むと、勝手にカーナビが誘導を続けるのだった。
これも何かの縁と直樹はカーナビの通りにパンダを走らせることにした。
読んでみて
どの話も幽霊やドッペルゲンガーが登場します。
しかし幽霊、ドッペルゲンガーというには何か違う…
ひとの心が残っているのです。
「海の家」には男の子の
「ファイトクラブ」は創業家のあの人の
「占い師」は自分自身の
「コロナと潜水服」は子どもの
「パンダ」は前の持ち主の
おのおのの、甘えたかった、もっとやりたかった、見返したかった、不安だった、別れを言いたかった
そんな気持ちらがこれらの小さな物語の主人公らを動かしていました。
科学的に解明しようとしたらできるかもしれない、
気のせいだと笑われてしまうかもしれない
でも体験した人らだけの小さな秘密は、書かれてはいないその後の人生のなにかになるような
そんな出来事だと感じました。
ちょっとだけ不思議なお話集です。
著者：奥田英朗
出版社：光文社
発売日：2020/12/22
【本日のサムネイル】
深海探査服・潜水服のイラスト
深海を探査する時に着るための、潜水服のイラストです。
コメント