【生きるのが少し楽になる物語】夜明けのすべて

文芸

どんな内容なの

PMSで感情を抑えられない美紗。
パニック障害になり生きがいも気力も失った山添。
友達でも恋人でもないけれど、
同志のような気持ちが芽生えた二人は、
自分にできることは少なくとも、
相手のことは助けられるかもしれないと思うようになり―。
人生は苦しいけれど、救いだってある。
生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。

HonyaClub より

そもそもPMS、パニック障害ってなんだろう?

月経前症候群(PMS)とは

月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、
月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。

精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、
集中力の低下、睡眠障害、
自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、
身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。

日本産婦人学会HPより

パニック障害とは

場所や時間に関係なく、突然起こる動悸、
胸の痛み、息苦しさ、めまいといった身体症状と、
このまま死んでしまうのではないかという強い恐怖を伴う発作が
繰り返し起こることによって特徴づけられる疾患です。

パニック発作とよばれるこのような身体症状、恐怖感はとても強いものなので、
患者さまはパニック発作に襲われた場面を避けたり、
またパニック発作が起きたらどうしようと心配したりすることで、
生活に支障をきたします。

国立精神・神経医療研究センターHPより

よんでみて

月経前の期間に心身状態に不調をきたしている人は多いと思います。
私も全身が凝り固まり、痛みと吐きブシュどく
一時期はPMSの時期は会社にいけず休んでしまうこともあり
今は症状を緩和する薬を処方されなんとか生活も安定しています。

主人公のひとりである美沙の場合は
怒りが抑えられなくなってしまいます。
いつもなら笑って流せるようなことも、
そのスイッチが入ったとたん自分でもやめようと思うのに
罵詈雑言が止まらなくなってしまうのです。

その彼女は、会社でいつもぼんやりしている山添に
炭酸のペットボトルを開けた時の「ブシュ」が気に入らないと
難癖をつけてしまいます。
周囲がなんとかなだめすかし、その場はおさまりました。

婦人科にも通い、よいときいたことはなんでも試してきた美沙。
学生のうちはなんとかごまかせても、社会人となってからは
それが通用しなくなってしまいます。

一方の主人公である山添は彼女と食事を終えた直後から違和感を感じます。
救急病院で受診しても異常なし。
翌日ちゃんと病院で診てもらおうとするも、外出がこわい。
またあんなふうになったらどうしよう。
会社にも行けず、誰にも相談できない。
山添は自分の殻に閉じこもってしまいます。

そんな二人は同じ会社で勤務し、
偶然美沙が山添がパニック障害ではと気づき、ある行動にでます。
普段の美沙なら絶対やらないであろう行動をなぜ起こしたのか。
その行動で二人はなんとなくお互いの不調をやり過ごすことができるようになっていきます。

この小説はお互いが病気でありますが
それに変に気遣うことなく、やり過ごしたりカバーしあう物語です。
そしてそこに恋愛感情はありません。
作中で会社の人らに「つきあってないのー?」と揶揄される場面はありますが
つきあってません。
ある意味付き合ってないからこそできるさりげないフォローです。
入院し退院したら「退院おめでとう」とゼリーをあげる。
パニック発作が出てしんどそうだったので、
コンビニで食べられそうなものをいくつか買ってきてあげる。
友だちや同僚がしんどそうだったら誰しもがちょっとやってあげることに
必ずしも恋愛はいらないんですよね。

美沙が山添のパニック障害を社長に伝えた時
社長は彼女に自分が30年間ある病気に罹患してることを伝えます。
そして社員のだれもが、ちょっとした体調不良と付き合ってることを示します。
だから彼女のPMSも、山添のパニック障害も
そういう些細なことで
みんなそういうのを抱えているから気にしない
なるほどこういう伝え方もあるんだなと。

しんどそうだったら助けてあげる
ちょっとできなそうだから助けてもらう
そんな当たり前のことが言いにくい世の中だからこそ
この小説はじんわりと染み入ります。


夜明けのすべて

著者:瀬尾まいこ
出版社:水鈴社
発売日:2020年10月20日


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