【あなたの身近にもいるかも】ヤングケアラー 介護する子どもたち

ノンフィクション

去年の秋くらいからちらほら耳にするようになった
「ヤングケアラー」
介護をしている子どもたちを差す言葉です。
そんな子どもたちはどんな生活をしているのか。
自治体や政府はどんなサポートをしているのかを知りたくて
本書を手に取りました。

どんな内容なの?

小学生~高校生(18歳)までの子どもが
親、祖父母、幼いきょうだいの面倒をみたり、家事をおこなったりしている。
そんな子どもたちが全国にどれくらいいるのか…
毎日新聞の取材班が少しずつ取材を行うルポルタージュです。
この本の面白い部分の一つが
「どのように取材班が動くか」
が赤裸々に書かれています。
コロナ禍ということ、
いち会社員ということ、
そういう部分もふまえて取材をしている。
「中の人」の気持ちも書かれている珍しいものです。

第1章 透明な存在

2019年9月 向畑記者は先輩に
「ヤングケアラーって知ってますか?」
そう尋ねたことから始まりました。
彼は特報部に所属しており、日常的な取材を免除そのかわり
世の中に隠れた問題を掘り起こす「調査報道」を専門としています。
そこでこの「ヤングケアラー」を調べることになりました。
調べた2019年当時、
日本にはヤングケアラーがいったい何人いるかわからない状態だということ。
全国規模の調査は全く行われていませんでした。
とある方面から「オーダーメイド集計」という方法を知り
それを利用したことでヤングケアラーの具体的な数値がわかります。
そして新聞に最初の記事が掲載されます。

第2章 孤立する子「見るのがつらい」

新聞を読む親子

コロナ禍で対面取材が出来ない。
取材班は難航していましたが、新聞記事をみての反響は多かったのです。
その中でも「自分は元ヤングケアラーだった」
と書く人も多数いました。
そんな方々に取材をしていくうちに見えてくるものがあります。
必ずしも「ヤングケアラー=かわいそう」ではない、ということでした。
取材を続けながら国への働き掛けも行っています。
ですがあまり芳しいものではありませんでした。

第3章 えっ?国が全国調査?

21歳の女性が介護中に殺害してしまった…
これはヤングケアラー事例ではないか?
そう思った取材班はこの事件について調べ始めます。
また2020年10月に厚生労働省がヤングケアラーについて
全国調査を始めると公表しました。
記事を重ねるごとに、議員や国が動き始めていました。

第4章 1クラスに1人いる

埼玉県

2020年3月 埼玉県にて「埼玉県ケアラー支援条例」が制定されました。
「介護するすべての人が健康で文化的な生活を営むことが出来る社会」を目標に
18歳未満のケアラーをヤングケアラーと定義
全国ではじめて支援を明記しました。
いままで研究者が独自に調査を行っていましたが
埼玉県の高校11校にアンケート調査を行い
その具体的な状況が発表されました。

第5章 全国調査結果

夕方の校舎

2021年4月に政府は全国調査の結果を公表しました。
この中には幼いきょうだいのケアも集計に含まれていました。
中学2年、高校2年に調査を行ったのですが
その回収率があまりに低かったのです。
何故なのでしょうか…
また学校現場ではケアラーに対してどうフォローするか
手探りがはじまっていました。

第6章 支援本格化へ

国会議事堂

記事が発表されるごとに
反響や介護保険の問題点などがあげられるようになっていきました。
それを丁寧にすくいとって
国会議員に提言していきます。
その活動もあってすこしずつ国が動いています…

よんでみて

毎日新聞の取材班が
そのメンバーが時折変わりながらも
デリケートな問題をどう伝えていくか、
かなり考えて、また先を見据えて書かれていることがわかるものでした。
このように取材方法や流れ、
メンバーの構成など詳細がわかるのは珍しいと思います。
それと同時に
どのように国会議員に訴えれば動いてもらえるか
そこまでかんがえていることも脱帽です。
またコロナ禍でどう取材するか、
この軽いとはいえない問題を受け止めることの
精神的なつらさ。
誰も悪くはない、でも幼い子供たちがしなければいけないことなのか?
各家庭個々の問題にどこまで介入するか。
とても大事なことだと思います。
祖父母などの高齢者だけでなく
依存症やうつ病などを両親が患っている、
幼いきょうだいがいる
私たちがおもっている以上にヤングケアラーたちは身近に
ひっそりとあたりまえにいるかもしれません。
だからこそ、そんな子供たちや
元ケアラーだった人たちが生きやすい世の中になってほしいと思いました。
本書で取り上げたヤングケアラー(元含む)たちは
その過去や現在を恨んだりすることなく
自分の力で切り開いていることがうれしかったです。
自分には関係ない、ではなく
もしかしたらご自身のお子さんが、という
もしも、も見据えて読んでみませんか。

※本書には元ヤングケアラーたちの体験が多数書かれています。
こちらでは取り上げませんでしたが気になる方は
是非本書を読んでみてくださいね。


【あらすじ】

ほとんど知られていなかった若者による、家族の介護の実態。
取材班の報道をきっかけに、
自治体が調査を開始、そして国が動き出す―。
第25回新聞労連ジャーナリズム大賞・優秀賞。
毎日新聞連載「ヤングケアラー 幼き介護」の書籍化!

第1章 透明な存在
第2章 孤立する子「見るのがつらい」
第3章 えっ?国が全国調査?
第4章 1クラスに1人いる
第5章 全国調査結果
第6章 支援本格化へ

HonyaClub より

ヤングケアラー 介護する子どもたち

著者:毎日新聞取材班
出版社:毎日新聞出版
発売日:2021/11/27


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