【本心を語れる人はいますか】本心

文芸

平野啓一郎さんの、文芸小説です。

どんな内容なの?

【あらすじ】
『マチネの終わりに』『ある男』と、
ヒットを連発する平野啓一郎の最新作。

 舞台は、「自由死」が合法化された近未来の日本。
最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は、
「自由死」を望んだ母の、<本心>を探ろうとする。
 母の友人だった女性、
かつて交際関係にあった老作家…。
それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。

ミステリー的な手法を使いながらも、
「死の自己決定」「貧困」「社会の分断」といった、
現代人がこれから直面する課題を浮き彫りにし、
愛と幸福の真実を問いかける平野文学の到達点。
読書の醍醐味を味わわせてくれる本格派小説です。

HonyaClub より

本書はざっくりと三つにわけることができます。

母親が亡くなってから(第一章~第六章)

母親がある日突然亡くなった。
母は数日前から「自由死」をしたいと言っていた。
とあるサービスを申し込み、母親と疑似対面しながらその言葉に耳を傾ける。
なぜ「死」を選ぼうとしたのか。
その「本心」が知りたかった。
生前母が仲の良かった女性に連絡を試みる。

母親の友人と同居を始める(第七章~第九章)

とあるトラブルによって母の友人である女性と同居を始める。
女性との共同生活は思った以上に心地よいものだった。
ある日同僚の悪い噂が耳に入る。
本人はやや興奮はしていたものの、いつも通り通話を切った。
あくる日、いつもとは違う奇妙な仕事が舞い込んできた。

事件が起きてから(第十章~終章まで)

奇妙な仕事の末、些細なことで有名人になってしまった。
それがもとで、今までの仕事をやめ
とある人のお手伝いをすることとなった。
その仕事は仕事とは言えないものだったが、
今まで以上賃金が入手できる。
それだけでなくその人と「友人関係」と思えるような
そんな気持ちになっていた。


読んでみて

このお話にはありとあらゆることが詰まっています。

自ら死を選べる「自由死」
亡くなった人を「バーチャルフィギュア」として作成販売。
ゴーグルをつけた人の視野や動き行動を疑似体験することができる「リアルアバター」。
所得の差が今まで以上あり、75歳以上でも働いているワーキングプア。
事件や事故、それだけでなくどんな些細なことまでも勝手にスマートフォンで撮影し
SNSにアップロードしてしまう。
そしてその動画を見て、お礼や「いいね!」の代わりの高額な「課金」。
コンビニエンスストアで働いてる「外国人労働者」
日本に住んではいるものの親が日本語を不得意なために
その子どもも言語の習得が不十分になり教育から取りこぼされていく…

ありとあらゆる社会問題を盛り込みながらも、
最後は希望を感じられるものとなっています。

自由死やリアルアバターという仕事など
ひとつひとつを見ていけば
「そういうのもあるよね」なのに
それらが複合された物語は
確実に数年後の未来なのだと、読んだ後だからこそ痛感しています。
テクノロジーが進化していくことは止められません。
どんな社会になろうとも
人と交流していくことは大切なのだと
突きつけられたように思います。

「読む」というよりも「体験」のようなそんな読後でした。


本心

著者:平野啓一郎
出版社:文藝春秋
発売日:2021/5/26

著者からのメッセージ

『本心』は、僕自身も属するロスジェネ世代が高齢者となり、その子供たちが社会の中心となっている時代を想像しながら書いた小説です。

20年ほど先の未来に、この世界はどう変化していて、
僕たちは何を感じ、考えながら生きているのでしょうか。
シングル・マザーに育てられた主人公の青年は、母の死後、
その孤独と喪失感から立ち直れず、AIで再現された本物そっくりの母を手に入れます。
彼は、他人に自分の体を貸して命令通りに動く「リアル・アバター」という仕事をしていますが、
そんな彼にとって、母親は唯一、「本心」を明かすことの出来る存在でした。
人間は、人の「本心」を知りたく、また「本心」を知ってほしい生き物です。
しかし、「本心」とは、結局のところ、何なのでしょうか? 
主人公は、貧しいながらも幸福だった母との生活が、
ある日突然、終わりを告げてしまったことの意味を考えます。
なぜなら、それを終わらせたがっていたのは、母だったからです。
母が親しく交わった人たちとの交流を通じて、
彼は、母の「本心」を少しずつ理解してゆきます。
そして、今の自分の思いを、もう伝えられないことに苦しみます。
彼が悲しみから立ち直って行く過程を通じて、
親子について、個人の命について、格差について、
「普通」であることについて、そしてやはり「愛」について考えました。
何よりも、面白い小説を目指しました。
「分人主義」を通じ、
多くの読者が生きることに肯定的な感情を持ってくれましたが、
この小説はその仕事を更に大きく前進させたものです。
連載中から、僕の作品の中でも、
一番好きだと言ってくれる読者がたくさんいました。
コロナ禍によって傷つき、苦しんでいる今こそ、
一人でも多くの人に読んで欲しい小説です。                                                     平野啓一郎

Amazonより

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