【シリーズ初の短編集】などらきの首 【比嘉姉妹シリーズ3】

文芸

比嘉姉妹シリーズの三作目、今回はシリーズ初の短編集です。
(「ぼぎわんが、来る」、「ずうのめ人形」が前作ふたつです)


・ゴカイノカイ
・学校は死の匂い
・居酒屋脳髄談義
・悲鳴
・ファインダーの向こうに
・などらきの首
上記6編から構成されています。

・ゴカイノカイ

実際おきていても何ら不思議ではないケース
1・起業をした親が急死し、部下になめられている二代目社長
2・真夜中に「痛いよう痛いよう」と声が聞こえる
3・ブラック会社の上司の暴言と暴力
この三つがあわさって、不幸なことがおきていた事件です。
ずっと自信のなかった二代目が、
ブラック会社社長にはっきり「話し合いましょう」と言えたのがよかったです。
すごくリアルすぎなので、ブラック会社にいる方は逃げてほしいですね…

・学校は死の匂い

比嘉姉妹 の次女である美晴が主人公です。
美晴は前作「ずうのめ人形」にも登場していますね。
事件解決の説明が少しわかりにくかったなと思いました。
白い少女が長い期間、仲間に罪悪感があったと思うとつらいおはなし。
実際は仲間でもなんでもなかったというところも悲しい…
作中では無邪気な三女の真琴と、
この時点(たぶん中学生)で長女である琴子がいろいろ勉強していた様子も垣間見えます。

・居酒屋脳髄談義

作者は現代の嫌な部分をこの短編集に凝縮したいのかな?
と思ってしまった本作は
「仕事が終わった後におとなしい女子社員を居酒屋に呼び出して
男性先輩社員が暴言パワハラセクハラし放題で日ごろのうっ憤を晴らす」
という最悪の内容です。
しかし男性社員らは「悪いことしていない!」ばかりで
自覚がないのが恐ろしいところです。

・悲鳴

今回の短編集で一番難解と感じました。
「ずうのめ人形」の登場人物がでてます、とネタバレを読みましたが
どうも納得できませんでした。
とあるネタバレを読んで
「この年齢でこれをしたとしたら、ずうのめがああなったの納得だわ…」
となりました、が登場人物が彼女とははっきり記載されていないので
結局読み手にまかされているんですよね…
「ずうのめ人形」読み返すとわかりますがこの話単品だけですと
なんだか不思議な話だなーで終わってしまうのでもったいないですね

・ファインダーの向こうに

野崎と真琴の出会いの話です。
「そうだよ!読者はこういうの読みたいんだよ!!!!」と
声を大にして言いたいところ。
このシリーズでは珍しく、やさしいおはなしでした。
(他がひどすぎる気がしなくもないんですよね…
実際こういうことが起きていても不思議ではないし
こういうことが起きてほしいですね

・などらきの首

野崎の初めての怪異体験らしいのですが…
「などらきの首」の伝承がわかりにくく何度か読み返してしまいました。
なぜ従弟はあんなことしたのか、
本当に脅かすだけだったのか、
そしてあの死は「などらきが首を取り返しに行った」としか考えられない展開がすごいです。
伝承伝説のある場所でいたずらはやめましょう、というものでした。(乱暴)

まとめ

比嘉姉妹シリーズという冠がついてますが
はっきり名前が表示されてない作品もあるので
そこははっきり明記してほしいな、と思いました。

人が笑ってる場所に幽霊お化けはやってこないのか、
どうしてもホラー小説は鬱屈した人間関係が書かれることが多いですが
今回はいじめ、パワハラ、セクハラ、暴言、暴力が連続なので
直接的な表現はないものの
心がずーん…になってしまうので
元気な時に読むのをお薦めします。

個人的には「学校は死の匂い」で
姉妹の幼少期の生活が垣間見えていて
琴子と真琴は各作品で
「能力に目覚めなければよかった」と言っていますが
それでも(まだ)幸せだったころが読めてよかったです。




【あらすじ】

「などらきさんに首取られんぞ」
祖父母の住む地域に伝わる“などらき”という化け物。
刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。
しかし不可能な状況で、首は忽然と消えた。
僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが…。
野崎はじめての事件を描いた表題作に加え、
真琴と野崎の出会いや琴子の学生時代などファン必見のエピソード満載、
比嘉姉妹シリーズ初の短編集!


などらきの首 比嘉姉妹シリーズ (角川ホラー文庫)

著者:澤村伊智
出版社:KADOKAWA
発売日:2018/10/24


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