どんな内容なの?
気鋭の民俗学者は、ある時大学をやめ、老人ホームで働き始める。
HonyaClub より
気づくと彼女は、「忘れられた日本人」たちの語りに身を委ねていた…。
聞き書きの圧倒的な可能性を活写し、高齢者ケアを革新する書。
第1章 老人ホームは民俗学の宝庫
・「テーマなき聞き書き」の喜び
・老人ホームで出会った「忘れられた日本人」
・女の生き方
ある日利用者のひとりが
「こんな年寄りになってただ生きるのは地獄同然だ」と言いました。
なぜそう思ったのか、
その絶望をどう受け止めればいいのか。
第2章 カラダの記憶
・身体に刻み込まれた記憶
・トイレ介助が面白い
レクリエーションの時間にとあるゲームを提案してみたら、思いの外大盛り上がり!
その行動から生活史が見えてきた。
第3章 民俗学が認知症と出会う
・とことんつきあい、とことん記録する
・散りばめられた言葉を紡ぐ
・同じ問いの繰り返し
・幻覚と昔話
いつも徘徊をしてる利用者さん。
話すことも人生訓だったり、脈絡のないことだったり。
著者はふとあることに気づきます。
第4章 語りの森へ
・「回想法ではない」と言わなければいけない訳
・人生のターミナルケアとしての聞き書き
・生きた証を継承する―『想い出の記』
・喪失の語り―そして私も語りの樹海に飲み込まれていく
著者が行ってるのは「回想法」という方法ですが
勉強会では著者が思っていること、現場で起きてることとは
ちょっと違った話になってるようです。
終章 「驚けない」現実と「驚き続ける」ことの意味
・驚き続けること
・驚きは利用者と対等に向き合うための始まりだ
編集さんから何気なく言われた
「驚きというテーマで書いてください」
その驚きというキーワードの意味の大きさにその後気づくことになります。
よんでみて
大学で民俗学の先生をしていた著者が、今は介護施設に勤務しており
民俗学と介護は似てる点がある!と気づいてから
その視点でみるように…
とざっくりまとめるとこのような内容になります。
介護本読んでるとたびたび紹介されている本書
いつか読んでみたいと思っていましたが
やっと読めました。
過去に訪問介護ヘルパーをしていたことがあります。
その研修で介護施設で利用者である高齢者と接しているとき、
正直なに言ってるかわからない聞き取れないことがたびたびありました。
「そうなんですか」
とうやむやにしてごまかしていましたが
著者はちゃんと傾聴するんですね。
著者はなんども丁寧に話を聞いて、その人の人生を書き留める。
そしてまとめる。
その話は今の私たちがしらないことだらけです。
「馬喰」(ばくろう)の話
流しのバイオリン弾きの話
蚕の選別嬢の話
当時は当たり前だった市民の仕事で
今はなき文化や仕事について書かれているものはあまり多くはないと思います。
その思い出を著者は驚きのアンテナでキャッチし、そして残す。
介護の現場はいつも人手不足で忙しいものですが
そんな中でも驚いてくれる、話をきいてくれる
仕事とはいえすごいなあと思います。
その驚きを著者は
「驚きは利用者と対等に向き合うための始まりだ」
こう書いていたのが印象的でした。
著者:六車由美
出版社:学院書院
発売日:2012年2月27日
【本日のサムネイル】
介護のイラスト「車椅子のおばあさん」
車椅子に乗って介護士さんに押されているおばあさんのイラストです。
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