【それでもここで生きる】白い土地 ルポ 福島 「帰還困難区域」とその周辺

ノンフィクション

タイトルは、本当は「白地」と書いて「しろじ」と読みます。
行政用語で、「帰還困難区域」でも「特定復興再生拠点」以外のエリア。
つまり、東日本大震災時の福島第一原発事故によって汚染された地域( 帰還困難区域 )の中でも
特に放射線量が多く、将来的に住民の住居の見通しが立っていないエリアを指す隠語。
これはその「白地」とその周辺エリアのルポです。
個人的に「白地」については冒頭のみ、ほぼ触れられていないので
それをタイトルにする意味がちょっと分かりませんでした。

11章から構成されている本書は
・津波で流された娘を探しに毎週末避難先の長野県から450kmかけてやってくる父親と娘
・高校馬術部の大会出場と、伝統の祭り相馬野馬追にかけるおもい
・かつて強豪だった高校野球部のOB
・避難解除後ふるさとへ戻った人の為にひとり新聞配達を行う新聞屋
など。


かつて事故によって帰宅困難区域となった場所は
今後人が住むことは不可能だろうとも言われました。
今はその一部の地域に戻って住んでいる人々がいます。
働く場所が激減したので、被害者だった人も
その原発で廃炉作業を行っています。
朝日新聞社の記者がここに拠点をおき、
ルポを書けば…という気持ちが透けて見える章もあります。
震災発生以降、さまざまな人たちがスクープ目的、お金儲け、人助け、目立ちたい…
さまざまな理由で入れ替わり立ち替わりで、それに地元住民が疲弊していたこと。
それらはそこがふるさとではない人たちには見えていなかったようです。

それでも、事故当時の浪江町町長 馬場有氏(ばばたもつ)へのインタビュー、
福島水素エネルギー研究フィールドでの安倍首相(当時)への問いかけ。
本書すべてにおいて物語、他人事のように書かれているなかで、
この二つは著者だから書けたことなのかもしれません。
また、数ある原発事故本で書かれていない重要なことが書かれていました。

「NHKが環境省の発表とは異なる事実を
県内放送とインターネットニュースで配信したのだ」

本書200Pより抜粋


福島県民は県内で放送されているNHKニュースは、
全国にも同じものが流れていると思っています。
ですが時折、このように異なる内容を放送していたことが度々あったようです。
当たり前のようにさらっと書かれていますが、かなり重要だと思います。
故 馬場氏が事故後はじめて東電幹部に会った際にいった
「あなた方はいつもそうだ」
この事故は国も東電も都合の悪いことは、被害住民にも国民にもひた隠し、
もしくはのちに小出しで発表し誤魔化し続けている可能性がある。
それを忘れてはいけないと思います。

【目次】

序章 白い土地
第一章 夕凪の海
第二章 馬術部の青春
第三章 「アトム打線」と呼ばれて
第四章 鈴木新聞舗の冬
第五章 ある町長の死 1
第六章 ある町長の死 2
第七章 ある町長の死 3
第八章 満州移民の村
第九章 フレコンバッグと風評被害
第一〇章 新しい町
第一一章 聖火ランナー
終章 一〇〇〇年先の未来



【本日のサムネイル】
福島第一原発のイラスト

福島県の双葉町に建設された東京電力の原子力発電所、
福島第一原子力発電所(1~4号機)のイラストです。
2011年の東日本大震災で爆発事故を起こしました。



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