チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

ノンフィクション

【初回公開:2013/07/11 (Thu) 21:15】


チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1
東 浩紀 (著, 編集)

単行本(ソフトカバー): 160ページ
出版社: ゲンロン (2013/7/4)
言語 日本語
ISBN-10: 4907188013
ISBN-13: 978-4907188016
発売日: 2013/7/4

「観光地化する原発事故跡地!」
誰も知らない、あの悲劇の27年後とは――

3.11後に福島で取材を重ねた東浩紀・開沼博・津田大介の3名が、チェルノブイリへの取材を敢行。
立入禁止区域内、廃墟と化した周辺自治体、
そして原子力発電所内部を巡りながら、未だ収束しない事故現場でさまざまな関係者の声を聞きました。
写真家・新津保建秀の美しくも緊張感の漲ったグラビアとともに、その現場を子細にレポートします。
東浩紀によるツアー手記や開沼博による論考、
津田大介によるルポルタージュに加え、
観光学者・井出明による世界の「ダークツーリズム」スポットのガイドや、
速水健朗による「空想のなかのチェルノブイリ」文化論、
ロシア/ウクライナの専門家によるコラムなども充実。
1986年に起きたレベル7の原発事故から四半世紀。
チェルノブイリの「現在」から、日本の「未来」を導きだす一冊です。

続く思想地図β4-2「福島第一原発観光地化計画」と対を成す、思想地図βシリーズの新境地!

(Amazonより

書評とか、人に読ませる文章(SNSはのぞく)において
個人的なことまで書くのは如何なものかと思う。
今回はそうも言ってられないのであえて書こうと思う。
福島出身で家族が避難生活をしてます。
読み終わるまで三日かかりました。
正直しんどい時間でもありました。
でも読んでよかった。
書いてくれてありがとうと思います。

これは福島第一原発を観光化しようと東浩紀氏が中心となって始まったプロジェクトの一環の取材本です。
ダークツーリズムとは負の遺産をめぐる旅。
観光というとレジャー的要素が取り上げられる日本ですが、
広島の原爆ドームや
沖縄のひめゆりの塔などを考えていただければと。
フクイチ観光化にあたってチェルノブイリではどのようになっているか。
その取材はただ「いってきましたー!」
ではなく
博物館館長、コーディネーター、観光プランナー、
そして住んではいけない場所に住む人までインタビューや
そこに関わる書物などの紹介
国内外のダークツーリズムの紹介まで。
かゆいところにてが届く、ダークツーリズムの入門書になってます。

「事故跡地への無闇な恐怖を取り払うために、根底には何よりも啓蒙の精神が必要」

「放射能にまつわる誤った情報は、驚くほど人間を傷つけます。
誤った情報は放射能それ自体よりも危険です」

「観光地化に対する反発は三つのグループにわけることができます。
最小の被曝でも危険であると考えてる人々。
ビジネスのため放射線量を過大評価しようとする人々。
一部の環境団体や社会団体。しばし善意が被災者に悪意をもたらす。」

「作業員は自分達の仕事をみてもらいたかった。自分達の仕事に誇りをもっている」

(本文インタビューより抜粋)

特にシロタ氏のインタビューが心に残ってます。
読んでて時間がかかった、
読んでてしんどかったのは
自分の故郷がみせものになるという不安感や嫌悪感のようなもの。
実際いま南相馬市内には観光バスがきて街中を走ってるそうです。
以前観光化について避難してる知人や家族に聞いてみました。
反対するだろうと予想していた団塊の世代の方々が観光化については
「まあしょうがないよね」と。
勿論「とんでもねえ!!」と反対の方々もいらっしゃいました。
自分は観光化には賛成でしたが
インタビュー前の部分までは正直辛かったです。
(実際チェルノブイリでの取材部分です)
その取材の部分を読んで
「あーこういう感じになるのか・・・」と
何故か気持ちがどんどん重くなっていきました。
郷土愛、とかじゃなく表現できないモヤモヤがありました。
シロタ氏が事故前に住んでいた場所はもう廃墟で、そこに帰ることはできない。
住むことはできないと受け入れて、そうしていまの仕事をしている。
そのインタビューはなんといいますか
読んで思ったのは
「迷っていいんだな」と。
実際チェルノブイリでもいろんな意見があったようです。
観光化はいますぐ取りかかったほうがいいことです。
きっと時間がこれ以上経過してしまったら、大事な資料となるべきものが失われるでしょう。
でもそれを保存することと
自分の気持ちのゆれは別でもいいのかな。
時間はかかるとは思いますし
実際観光化された時嫌悪感を抱くかもしれませんが。
でもこの災害の記憶を残すべきだというのは変わらないと思います。

たぶん避難者のなかでは嫌な気持ちの方もいらっしゃると思います。
それでも当事者ではないけれど、個々が考える大事なことだと思います。
被災者だけの問題じゃなく、みんなの問題だからこそいろんな立場の方に立場の方に読んでほしいです。

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1


著者:東 浩紀
出版社:ゲンロン
発売日:2013/7/4

【2021/03/11 追記】
震災が起きて10年です。
会える人、もう会えない人、行ける場所、もういけない場所
大きく変わっていますが、皆さんが思っている以上にみんな普通に暮らしてます。
除染が終わって住める場所、だけですが。
著者はこの著作にて「福島にてチェルノブイリと同じようにダークツーリズムをしたい」
と明言されていました。
当時このダークツーリズムについては被災者避難者でも意見が真っ二つだったと聞いてます。
自分たちの故郷が「みせもの」になることに反対だと語ってくれた方もいます。
個人的にどっちが正解なのかはわかりません。
ただ、帰ってきてる戻って暮らしてる人がいます。
震災以降気に入ってくださって移住してる人もいます。
あまり騒がず、そっとしてほしい。
でも忘れないでほしいです。

【本日のサムネイル】
チェルノブイリ原発のイラスト
1986年に暴走事故を起こし閉鎖された、チェルノブイリ原子力発電所のイラストです。

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