タイトル通り
「現代アートを続けていたらいつのまにかマタギの嫁になっていた」
そんな著者が一年を通しての山の暮らしのことを書いた本です。
どんな内容なの?
「アートなんてやっていていいのか」
HonyaClub より
3.11以来、自分の活動に行き詰まりを感じていた現代美術家が、
ひょんなことからマタギの村へ。
濃密な自然と濃厚な人間関係にほだされ、
いつのまにかマタギ頭に嫁いでいたその日々をしなやかな文章で綴り、
多くの人に勇気を与える傑作移住日記の誕生!
1章 夏
・やさしくない薪割りと、優しい村の人々
・ベンチがゆとりを生むかと思ったが
・地震があっても山へいくのが梅雨
・禊ぎと鮎かき
・冬のために、山を焼く夏
・お墓とお墓参り
夏からはじまるの珍しいなと思ったのですが、読んで納得です。
村のみなさんがお互いの家のことを自分事と考えていて、お手伝いしあう文化なのですね。
2章 秋
・わかりにくいグルメ
・伝統野菜の赤かぶ
・よくないことは、ロマンチックに丸め込む
・悪い顔にさせる舞茸
・雪が積もる前に改修工事だ
・ものづくりとコミュニケーション
・ヤマドリを食う
舞茸エピソード、最初は嫁独特の
「自分だけ体験してないからわかんない…」が
あるあるすぎてあかべこ状態でしたが、
急の展開ににっこりでした。
3章 冬
・冬の仕事と時代の流れ
・前向きな姿勢で雪を迎えるのは難しい
・山の村にも鮭がくる
・熊巻き狩りの泊まり山
・未知の獣、イノシシ ここから
・大雪と停電と薪ストーブ
・穴熊が冬を盛り上げる
・雪崩と地震と山と人々
停電でもへいちゃら!
なんなら焼肉もやっちゃおう!!なストロングスタイルが頼もしい冬回ですが
実際はどんどん降り積もる雪との格闘はつらいものがありますよね…
(こちら北海道なのでちょっと親近感です)
4章 春
・山と同調する人々
・伸びしろたっぷり
・桜色の春がきた
・熊を裏切るカラス
・熊汁今昔
・夜の機織りがダメなわけ
・四年ぶりの熊祭り
・新たな仲間
「夜の機織りがなぜダメなのか」というタイトルなのに
カメムシだらけで、えらいことに…
いろいろ言い伝えがあるのもまた文化なのかもしれません。
特別原稿 再び鳴り始めた村の心音
なかなかガツンとくる内容で、
民藝とは
伝統とは
と考えてしまいます。
読んでみて
偶然誘われた山登り。
そこでの体験を忘れられず、その時知り合った方に連絡し
山間の村での交流が続いて、結婚した著者。
その後その土地の伝統であり、
なくなってしまうかもしれない「羽越しな布」を織りはじめます。
むかしながらの山の暮らしは大変だけど面白い!の連続です。
といった内容です。
マタギについての本はあれど
現代マタギの、その家族の話はなかなかないでしょう
そういう意味でも大変興味深い内容でした。
舞台である山熊田(やまくまだ)は18軒37人が住み
高齢者は63%という状態です。
その生活は自然と密着していて、
山暮らし=スローライフ、なんて考えとは真逆の、
毎日がやること盛りだくさん。
冬に備えての薪割りや、棒を使っての鮎とり
晩秋の狩り、独特なお正月…
それは70年代だったら、各地で見られた当たり前の風景かもしれませんが
令和の現在も続いていることに驚愕しかありません。
(著者の家にしかTVがないのもすごいです)
山熊田の一年を通して書かれているので
わかりやすいのもありがたいです。
また配偶者さんのマタギとしての活動は
彼や爺婆から伝え聞きも含め書かれていることは大変貴重でしょう。
女性は狩りで山に入ってはいけない。
男衆は知ってる村のご神木がどこにあるのか女衆は誰も知らない。
もともと生息していなかったイノシシが北上してきたことに対する対応。
伝統的な巻き狩りによる熊猟。
女性は狩りの成功と無事をだた待つ。
古い伝統のあふれる生活でも、それは昔からの知恵や理由がある。
その生活の中で著者は消えゆくかもしれない「羽越しな布」の工房をたちあげます。
それに賛同してくれる人々も徐々に集まってきました。
なかなか一筋縄ではない自然と伝統がこれからも続いて行ってほしいと思うものでした。
現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていた
著者:大滝ジュンコ
出版社:山と渓谷社
発売日:2024/2/28
【本日のサムネイル】
刺しゅう・裁縫をしている女性のイラスト
床に座って、針と糸で布を縫っている女性のイラストです。
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