【どうして町にくるんだろ?】アーバン・ベア: となりのヒグマと向き合う

ノンフィクション

北海道酪農学園大学にて教授をされている著者が書いた
ヒグマについての本です。
マタギやアイヌのヒグマ本は様々ありますが
ヒグマのフィールドワークの本は珍しいと思います。

内容は

北海道大学農学部に入学後すぐに
ヒグマ研究グループに入り
天塩演習林にヒグマのフィールドワークに行きます。
ここから著者は北海道中の山々を訪問、
その季節ごとのヒグマの生態を記録、研究していきます。
その膨大なデータをまとめたのが本書です。

私たちがイメージするヒグマとは、

秋の山中、川に入り、遡上してきたサケを手でパーン!
というワイルドな狩りをしているものと思いますが、
実際はそのようなワイルドな狩りができるヒグマはごく一部
ほんとうに恵まれたものだけです。
現在の川は河岸工事されコンクリートに覆われ
海から川への入り口には人間が仕掛けたワナがびっしり
ヒグマが手を出せる状態ではありません。
サケが遡上するまえに川の入り口で捕獲されています。
これではヒグマがサケを狩ることはできません。

ヒグマの生活圏内の変化

また現在の山は
山、里山、町と
徐々に人が多くなっていくわけではなく
山からいきなり町になっています。
今までだと里山を経由となりましたがそれがありません。
メスグマは交尾目的のオスグマに執拗につきまとわれ
やむを得ず子グマと山を下りることがあります。
里山がないために、町へとおりることになるのです。
オスは交尾のため子グマを狙って殺すことがあるのです。
それだけではなく、季節によって出没理由もさまざまです。

ヒグマ、自然との共存と問題


1990~2000年代にかけて北海道は
「ヒグマとの共存」
を中心にそれまでの指針が変わってきています。
これまでの方法だと
札幌市周辺に住むヒグマがいなくなってしまう恐れがあったのです。
ヒグマだけでなくエゾジカも増えてきてる今
私たちはどのように自然と共存するかを真剣に考えなければいけません。
エゾジカの食害、ヒグマとの遭遇によるケガ、
自動車と動物の衝突事故など
それらの一部は私たちの生活の便利性と引き換えに
自然を変えたことによることが原因でもあるのです。
町に下りてきてしまったヒグマが殺処分され「かわいそう」
それで終わってはいけないのです。
なぜこのヒグマは町におりてしまったのか、
それを考えなければこれからも増えていくでしょう。

こんなにも多方面からヒグマについて書かれた本は初めてでした。
ヒグマについて知りたい方はぜひ。

【あらすじ】

かつてアイヌの人々に神と崇められ、開拓期には駆除の対象となり、
そして現代では豊かな自然の象徴となったヒグマ。
かれらはなぜ市街地に出没するようになったのか?
野生動物と人間の関係になにが起こっているのか?
ヒグマの生態からその謎に迫る。

序章 晩夏のヒグマの多様な素顔
第1章 北の森に暮らすヒグマの素顔
第2章 歴史的視点から見た人とヒグマの対立
第3章 農地への出没
第4章 市街地への出没
終章 これからのヒグマ管理

HonyaClub より

アーバン・ベア: となりのヒグマと向き合う

著者:佐藤喜和
出版社:‎ 東京大学出版会
発売日:2021/7/17


【本日のサムネイル】
熊に遭遇した人のイラスト
山のハイキングや登山の最中に大きなヒグマに出会った人のイラストです。

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