兄の終い

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ノンフィクション

「死んじゃったんならしょうがないよな」

長いこと連絡を取っていなかった唯一の家族の兄が
ある日突然亡くなりました。
しかも遠方、しかも兄には子供と二人暮らし。
自分の仕事もぎゅうぎゅう、
さてどうする?
とそんな話です。
「人生の始末を5日で終わらせれるんだ」
というのがあらすじを今!読んだ感想です。
ノンフィクションだったのか…!!!

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)


を読みおわった後で、同じ作者の本を探してた時
「ん?この翻訳者、いろんなところでみたな?」
今まで読んだ本のなかでも
「おもしろい!」「テンポがいいなあ!」
と思った本の翻訳をしていたのが著者でした。
「これだけ自分好みの文章だからきっと書いてる本も面白いだろう」
とあらすじもなにもわからないまま読みました。

一日目:著者、叔母、兄の元妻と娘の女性4人で宮城県塩釜市の警察署にいく→
    火葬の手配する→用意完了まで兄の住んでたアパートにいく→
    最後の挨拶をする。兄の息子と対面→火葬が住んだら叔母が帰宅→
    三人でアパートに戻り、ゴミの片付け→各々ホテルへ

二日目:市役所で諸々の手続き→アパートのゴミをゴミ袋に入れていく→
    ゴミ処理施設にゴミの搬入→兄の息子の小学校に行く→
    児童養護施設にいる兄の息子に会いに行く→
    アパートに戻ったら息子の友達がいたので
    飼育していた亀と魚を小学校に預かってもらいに一緒に行く→
    スーパーでごはんを購入→各々ホテルへ
   

三日目:特殊清掃・遺品整理サービスの人に会う→
    残ったものの処分を依頼する→
    車の処分をたまたまみかけた自動車販売店に依頼→
    仙台駅にて元妻とその娘とわかれる(各々帰路へ)

三週間後:多賀城駅前にて元妻と合流(レンタカー移動)→市役所にて息子の転居届→
     アパートにて遺品サービスの人と会う(終了確認)→
     アパートの大家に挨拶、鍵を返却→小学校にて息子と合流→
     学校で預かっていた亀と金魚を持ち帰るために梱包→
     児童養護施設にて職員と三週間の間お世話になっていた里親さんに挨拶→
     ホテルに宿泊

翌日:洋菓子店にてお土産を購入→
   アパートに寄って最後のおわかれ(大家さんが開けててくれた)→
   小学校に寄って最後のおわかれ→レンタカー返却→
   駅から東京に向かう

正直これ5日間で終わらせたのは本当にすごい!
元妻がガンガン突進していったパワーのすごさ…
と思ったけれど
こういう時思いっきりやらないと
感傷に浸ったらなんも進みませんよね。

またハッとしたのが
兄とその息子が住んでいたアパートの荷物について。
「住めば都」といいますが
その愛着のあるこまごまとした物品は
他人から見た時に「ゴミ」でしかないという事実。
男所帯で病気で家事も仕事もままならなかったであろうことで
室内はゴミ(ほんとうのゴミ)と生ごみと
腐敗した野菜などもあったようですが。
それ以外の
兄とその息子からみたら当たり前の、フィギュアとか
そういったものがどんどん袋に詰められること。
息子が使っていたものであろうものは
元妻とその娘が別に保管していたようですが
亡くなったとたん、その物品は輝きを失い捨てられるものなのかと。
もっとも妹である著者と壊滅的に仲が良くないのは
幾度となく書かれていたので
そこはそういうもの、なのかもしれません。

亡くなった手続き中に兄が生活保護だったことを知って
著者がショックをうけるシーンがありますが
このような亡くなり方だとこういうのも知ってしまうのか。
など
子供がいない自分には、
「自分が亡くなった時だれかがやってくれること」のように感じました。
誰も連絡とれなかったら市が介入するんでしたっけ…?
本書はかろうじて妹と元妻が片付けてくれましたが
これから独居老人が増えていく(増えている)現実では
冒頭のシーンのように
夜中に警察署から死亡の連絡が来るかもしれません。


しんみりするわけでなく
とにかく急いで!!の疾走感
その疾走の中で語られる兄と家族のエピソードは
完全にダメ人間のようなものですが
その遺品の中に兄本人の本音のようなものがあったり
息子との生活も大変だったんだろうなと感じます。
一方的に送られてきたお金の無心メールの中に
著者はほんの少しだけ兄の人生の大変さを感じていました。


でも感傷にどっぷりひたることなく
元妻と著者が二人三脚で5日間駆け抜けられたのは
兄の息子がいたからでしょう。
感傷より思い出より、その未来が大事で
そのために動いたからこそできたことだと感じました。

兄の終い

著者:村井理子
出版社:CCCメディアハウス
発売日:2020/3/30

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