「治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見」
という副題どおり
タンパク質「AIM」についての本です。
どんな内容なの？
【あらすじ】
HonyaClub より
日本では1000万頭近い猫が飼われているといわれますが、
その多くが腎臓病で亡くなっています。
猫に塩分を控えた食事をさせて日々気をつけていても、
加齢とともに腎機能は必ず低下してしまいます。
そんな猫の腎臓病の原因は、これまでまったく不明でした。
そんななか、宮崎徹先生が血液中のタンパク質
「AIM（apoptosis inhibitor of macrophage）」
が急性腎不全を治癒させる機能を持つことを解明しました。
猫は、このAIMが正常に機能しないために腎臓病にかかることもわかったのです。
この AIM を利用して猫に処方すれば、腎臓病の予防になり、
猫の寿命が大幅に延び、現在の猫の平均寿命である15歳の2倍である、
30歳まで生きることも可能であるとされています。
──これは、愛猫家にとっては、とてつもない朗報です。
さらに、AIMは、猫だけでなく人間にも効き、
また腎臓病だけでなくアルツハイマー型認知症や自己免疫疾患など、
これまで〈治せない〉と言われていた病気にも活用が期待されます。
本書は、最新医療の研究現場のリアルを伝えます。
「病気を治したい」
その一心で研究していた著者が発見した新しいタンパク質。
それがヒトの腎臓病に有効も？となり
さらにネコの腎臓病にも有効とわかって
現在それを用いてお薬をつくっていますよ、
というおはなしです。
序章 「余命１週間」からの復活
腎不全の末期症状だったネコのキジちゃん。
自分で餌を食べることも出来ず余命一週間と診断されていましたが
あるものを投与してから
キジちゃんは奇跡的回復を見せていました。
第１章 臨床から基礎医学の世界へ
著者が臨床医から研究者に転じたのは
「治せない病気を治したい」という気持ちからでした。
なぜそう強くおもったのか、
それは臨床医時代に腎臓病の患者さんたちとの出会いでした。
第２章 研究の修業時代
大学での研究は思った以上につらく、
そんななか指導してくださった先生の言葉で気持ちをあらたに。
そして初めて書いた論文が「ネイチャー」誌に掲載されました。
その後フランスにてポスドクとして働き始めます。
第３章 謎のタンパク質「ＡＩＭ」との出会い
三年目の冬、スイスのバーゼル研究所に正規職員として就職。
そこで謎のタンパク質を発見します。
その後テキサス大学へ移動し、
そしてAIMの正体に気づきます。
第４章 “治せない病気”とＡＩＭ
東大の「疾患生命工学センター」に教授として働くことが決まり
15年ぶりに帰国。
その間も医療は確実に進歩しましたが、
腎臓病はまだ「治せない病気」のままです。
そんな折に出会った方の何気ない言葉がブレイクスルーとなります。
第５章 ＡＩＭによる“ゴミ掃除”と腎臓病
2014年本格的に腎臓病とAIMの関連について
研究がはじまりました。
その中で腎臓病だけではなく
数多くの「治せない病気」たちを
治せる可能性が見えてきました。
第６章 ネコの腎臓病とＡＩＭ
「ヒト以外のAIMはどうなっているのだろうか？」
そう疑問を感じ、知り合いから動物の血液をわけてもらい
調べてみることに。
その三年後とあるセミナーに登壇、AIMについての講演を行います。
そこで
「ネコにはAIMがないらしい」
ひとことだけふれたそれに質問をする人がいました。
第７章 腎臓病のネコにＡＩＭを投与
そして話は序章でふれたキジちゃんになります。
いったいキジちゃんの体内で何が起こったのか。
そしてキジちゃんだけでなく、ほかのネコにも効果が。
第８章 ネコ薬の開発
自分でネコの薬をつくる。
そもそもどうやって会社をつくればいいのか、
タンパク質製剤のため作るのが困難ということ。
そんな時にたまたま参加した会合にて
大変興味を持った人があらわれます。
第９章 臨床試験に向けて
ベンチャー会社が創立され、
ネコの薬造りがスタートします。
同時にヒトの腎臓病治療の研究にも
おおきな進歩をもらたしていました。
第１０章 新型コロナウイルスとＡＩＭ
順調に進んでいたネコの薬造りでしたが
新型コロナウイルスのため中断を余儀なくされます。
ですがその間にもネコが亡くなっている！
著者は動き出しました。
読んでみて
ノンフィクションの本ですが
ドラマ化されそうな、物語のような話でした。
病気を治したいと臨床医から研究者になるのもすごいですが、
著者を支えてくれた各所の諸先生方や
AIMについて賛同してくださった方々、
ねこちゃんのためならと協力してくださった動物病院の方々
とにかく周囲と運に恵まれてるなあ！
ねこちゃんの薬だけでなく
ヒトにも応用が効き、実用されるかもしれない未来が
すぐ近くまであることにとても希望を感じました。
猫が30歳まで生きる日というタイトルが
現実になる日が待ち遠しいです。
猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「ＡＩＭ」の発見
著者：宮崎徹
出版社：時事通信社
発売日：2021/8/4
【本日のサムネイル】
ゆめかわ動物のイラスト（ねこ）
魚の上に座っているパステルカラーの猫のキャラクターです。
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