【好きな人を喰べて孕みたい】ピュア

文芸

【初回公開:2020/08/29 (Sat) 19:03】

・ピュア
・バースデー
・To the Moon
・幻胎
・エイジ
短編5編から構成されたSF小説です。

代表作ピュアは早川書房のnoteにて全文公開されたことで話題にもなりました。
どの話も女性が主人公で、現代が舞台じゃないのに
どこもおなじように生きにくそうな、女ってだけでどうしてこんなにも生きにくいんだろう
そう思いましたし、実生活でもそうだよなあとしみじみ考えてしまいました。

好きな人を食べたい
好きな人のために性別を変えたい
好きな人を守りたい
好きな人に認めてほしい

「好きな人のため」
男性よりも女性はこれが先んじてしまうのはなぜなのか。
自分よりもその人を考えてしまう。
それは産む機能をもっているからこその思考なのかもしれない。

※以下ネタバレ

・ピュア
セックスしたら男食べないと着床とかアイデアがすごい。
ただ進化してしまった女性の身体が想像しにくいかも。
鱗に覆われてる…のは柔らかいのだろうか。
攻撃特化型なのは理解しても、女性の肢体の柔らかさが表現されてるだけに
どうもミスマッチ感が否めない。
セックス中のみは鱗が軟化するのだろうかと考えてしまった。
乳房と臀部は鱗に覆われてないようなので、体躯のみなんだろうな。
マミとシホの「妊娠したい」と男にまたがりながら叫ぶシーンは
どこか悲しい。
セックスに夢は見てないけれど、結局セックスの先には妊娠ありきだもんな。

・バースデー。
田舎特有のしけっぽいねっとり具合と10代特有の葛藤がよかった。
一番好きかも。
ラストのブルーシャトーのくだりは某作家のオマージュかな?と思わせる感じだったけれど
その直前までの疾走感があったので気にならなかった。
ちえが男前すぎる。
いいSF百合でした。

・To the Moon
虐待モノが苦手なので冒頭のレジ打ちあたりで、なんとなくそういうじっとりした感じがあって
あーあと思った。
あの見ないふりだけど出てけばいいのに視線の表現がめちゃくちゃうまい。
うまいだけに濃縮還元みたいな感じで、短いのにカウンターパンチが聞いてる。
朔希が月にいったら記憶がなくなってて、それをなぞり直して
最後に旅を、の流れ。
初見はわかんなかったけど、望を解放してから月に行くこと記憶がなくなることは織り込み済みでの犯行だったんだなと理解した。
というか性器の一部切除とか叔父、マニアックというか下衆はそういう知識だけ一人前かよとやたら冷静に思ってしまった。
朔希が解放してその先でまた底辺にいて。
朔希にまた救いを求めるのは簡単だけど、望の子供はまた同じループじゃないんだろうか?
(か細くなる子供の声とあったけど、まさか手をかけてきたのだろうか)
短いながらどんよりが詰まってる…。

・幻胎
何度読んでも理解できないというか、納得できる落としどころができない作品。
父親に認めてほしい→理解できる
高難易度の大学に入って男と遊ぶの楽しい→理解できる
男と一緒に海外いって事故、男と連絡つかない→理解できる
父が裏で娘が会わないって言ってるから連絡してくんな!→あるある
男と再会トゥンク…→まあ理解する
事故で生殖機能が~だったのに卵子が存在してるということは
父が保存していたということなの?
古代人?をよみがえらせる実験に娘の卵子を用いるのは
ある意味マッドではあるけれども、もう卵子あるからそこらへん一気にできるから効率いいよね
という理解だったけれど本文だどなんかちがうっぽいし。
何よりも父とセックスして「誰の娘でもなくなった」が理解できない。
自慰に自分の名前を呼ぶ父はどう考えても娘ではなくいち個人としてみていたのだろう。
たいてい娘本位で父親とセックスする場合、父への復讐というパターンだけに
どうも解せない。
最後の親友への手紙も本文との相違があるわけで。
どうも本人と真実の相違があるっぽいだけにもやもや…

・エイジ
ピュアの男性側からの視点を書いたもの。
思考停止はこうなっちゃうのか。
セックスするだけだからなんも教育もしない希望もなかったらこうなるのか。
芹沢はあの世界で何を考えたんだろう。
エイジはユミに会った。
芹沢は本に会った。
それだけで十分なのかもしれない。

タイトル:ピュア
著者:小野美由紀
出版社:早川書房

ピュア

【2020/12/15追記】

早川書房のnoteで無料配信されていて読んだ際に「やべえ話出てきたな…」がピュアでした。

短編集の代表作をまるっと読ませてくれる太っ腹にもびっくりです。

性的なことがどの話にも書かれていますが、雰囲気がなんだか物悲しいなと思います。

(めちゃくちゃ明るい性の話ってそういえばないなあ)

性交のち出産して子をなすのは生物としての役割ですが

その後も生き続ける私たちはどこに向かっているのかなと思ったり

エンターテインメントではありますがいろいろ考えてしまう話でした。

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