豆塚エリさんの半自伝となります。
どんな内容なの?
著者である豆塚エリさんが産まれてから16歳に自殺未遂をし
そこから自立するまでの半自伝的エッセイです。
16歳のとき、死のうと思った。
HonyaClub より
すごく天気の良い日で、こんな日に死ねるなんて幸せだと思った。
自宅のベランダから飛び降り、頸髄を損傷するが一命をとりとめる。
「死ななくて良かった」、
「何もできなくても生きていていい」
現在を生きる筆者による、自死を止めたい、
やさしくなりたい、お守りのような言葉。
書き下ろし自伝エッセイ。
読んでみて
前半部分となるのが著者が自殺未遂をするまで
後半がその後どのように自立していったのかにわけることが出来ます。
著者は韓国人の母親と日本人の父親がいましたが、二人は離婚。
著者は母親のもとで暮らすことになりました。
母親は著者に対して八つ当たり(の度を越した)言葉を幼少期から投げかけていました。
また
「医師か弁護士にならないとここでは暮らしていけない」
日本語の読み書きができなく友人もいなかった母親は著者だけにその心をぶつけていきます。
それでも母親や周囲の期待に応えようと頑張り続けます。
義父との再婚や新しい生活、その破綻などさまざまな出来事を経て
ふたたび母親との二人暮らしの中で徐々に彼女の精神は追い詰められて、
当時住んでいた賃貸の窓から飛び降りてしまいます。
発見が早期だったこと、緊急病院が近所にあったことで一命をとりとめます。
頸椎損傷となってしまい、四肢が動かなくなってしまった彼女を
病院のスタッフはやさしく、時に厳しく接します。
日常に戻るために一歩ずつ前に進むために著者は考え、試行錯誤し
生きようとします。
ざっくりとした概要は上記になります。
義父との仲が悪くなるにつれて、徐々に著者の中の何かが
悲鳴を上げていってる
そんな臨場感がとてつもなく感じられます。
もちろん「往々にして思春期はそういうものだ」ともいう部分もあります。
学生生活が楽しければ楽しいほど心の滓のようなものがふくらんでいく。
病院生活はメモが取れたわけでもないのによくこんなに詳細に!と思ってしまうほどに
当事者ならではの生々しい独特な感じが書かれています。
「自分はひとりだ」と長い間思い込んでいたけれど
実際病院に母親や義父、父親やクラスメイト、そして恋人がお見舞いに訪問していて
読み手としてはほっとしました。
エッセイは母親と住居を離れ、一人暮らしをし
現在フリーデザイナーをして生活をされているところで結ばれています。
リハビリ病院を退院してからどうするか。
元彼氏が著者のいままでの作品をまとめた本を作ってくれたこと、
その本の評判がよかったことがその後のターニングポイントになったのだと思います。
学生時代に大学にいい条件で行くために頑張った詩が
その後の人生の支えになった。
人生なにがきっかけになるかわからないものだと痛感しました。
著者:豆塚エリ
出版社:三栄書房
発売日:2022年9月16日
【本日のサムネイル】
横から見た車椅子に乗る人のイラスト(女性)
横向きになった車いすに乗っている女性のイラストです。
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