【お父さんの思い出と大人になること】お父さんのバイオリン

文芸

【初回公開:2013/07/16 (Tue) 07:08】


お父さんのバイオリン
ほしおさなえ (著),

単行本(ソフトカバー): 242ページ
出版社: 徳間書店 (2011/11/16)
ISBN-10: 4198633002
ISBN-13: 978-4198633004
発売日: 2011/11/16
商品パッケージの寸法: 18.4 x 12.4 x 2 cm

小学校6年生の梢は、母親とふたりぐらし。
幼い頃交通事故で亡くなった父はバイオリン奏者だった。
母は父のいた楽団で働いている。
梢も父の遺したバイオリンを弾いていたが、ある事故がきっかけで、うまく弾けなくなり…。
同じ頃、突然楽団は解散することになった。
気力をなくした母親は、梢を連れて、夏休みにしばらく田舎にある実家に戻ることにした。
梢は、山間の小さな町を散策するうち、幼稚園くらいの小さな男の子と出会い…?
母の田舎で過ごしながら、亡き父との絆を見つめ直し、自分の生き方を探っていくさまを、瑞々しく語る感動作。

(amazonより

ついったで140文字小説がとても素敵で
どんなお話をかいていらっしゃるのか気になって読んでみました。

お父さんを幼い頃事故で亡くした梢
お母さんが働くオーケストラが経営不振で解散するところから始まります。
このお母さんの弱りかたがリアルでドキッとします。
お母さんと梢は祖母の住む町へ、いつもよりちょっと早い帰省をします。
そこで回復してゆくお母さん。
バイオリンの調子が悪い梢。
お父さんはもういませんが
これは父と娘の物語が中心です。
傷ついた心は大人とか子供とか関係なく
ちょっとしたことでぶり返したりします。
子供特有の、大人には言えない感じとか
ちょっとしたことなんだけど気を遣ってしまう感じ。
ああ、自分も子供の頃そうだったなあとか
ちょっとした感傷を感じながらも
つい梢を心配している自分がいました。
これはある夏に娘と母が前に進むための物語。
なによりも一番ぐっときたのは
梢のためにお母さんがしたいことを後回しにしようと提案したとき。
彼女はそれを断って提案をします。

「梢のためとか言って、自分のこと先伸ばしにするのは、逃げだよね。
梢が自分の夢を考えるのと同じくらい真剣に、わたしも自分の夢をかなえるように考える。
一生は一度しかないんだから」
(本文より

このとき初めてお母さんは梢を大人とみたのだと思います。
亡くなったお父さんがいた楽団を守りたい
娘を守りたいと思って頑張っていたあお母さん。
でもお母さんが思っていた以上にこの夏に娘は成長していたのです。

子供はかわいいものです。
つい自分の思い通りにしたい
なんでもしてあげたいと思うのは親心でしょう
でも親の知らないところで子供は成長しているのです。
最後のシーンはほんとうにグッと。
今まで頑張ったお母さん
これから頑張る梢にお父さんからのエールでもあるんだな
そう感じました。

夏の午後に夏の物語を読めてよかったです。


お父さんのバイオリン

タイトル:お父さんのバイオリン
著者:ほしおさなえ
出版社:徳間書店
発売日:2011/11/16


【2021/03/01 追記】
ほしおさなえさんの世界はどれもやさしいです。
これは児童書ですが、実際は大人にむけて書いたのではないかといまは思います。
子どもも大人も、心がしんどくなります。
その癒し方、回復方法は個人こじん異なりますし
その時々によっても違います。
長い人生ちょっとだけ休んでもいいんだよというお父さんのエールだったのではないでしょうか。


【本日のサムネイル】
バイオリンのイラスト
きれいなバイオリンのイラストです。

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